オレンジリボン・キャンペーン

「オレンジリボン・キャンペーン」を、ご存知ですか? 子どもの虐待を防止するために、オレンジのリボンをシンボルマークにして、みんなで子どもの虐待について知って、それを予防しようという活動です。毎年、11月に行われていますから、オレンジリボンをつけている人を見かけることもあると思います。子どもを虐待から守っていくことは、社会の誰にとっても、とても大事なことです。オレンジリボンを見かけたら、それをもう一度思い出してくださいね。

今回は、オレンジリボン運動はどうして始まったのか、そして子どもの虐待への取りくみの難しさについてお話したいと思います。

目次

1.オレンジリボン運動のはじまり
2.虐待への取りくみの難しさ

1.オレンジリボン運動のはじまり

最初から、ちょっと悲しいお話をしなくてはなりません。それは今から20年前のことです。栃木県小山市で3歳と4歳になる兄弟が、さんざん暴行を受けたうえに、橋の上から川に投げ込まれて命を奪われるという痛ましい事件が起きました。兄弟の殴られてはれあがった顔を見たコンビニの店長さんが警察に通報して、いったんは保護されたのに、再び暴行が繰り返されて最悪の結果になってしまったのでした。これを知った小山市の市民団体が、二度とこのような悲しい子どもの事件が起こらないように、と始めたのが、オレンジリボン運動です。

オレンジの色は里親家庭で育った子どもたちが「子どもたちの明るい未来を示す色」として選んだといわれています。その胸の中に、オレンジフルーツのような明るさと暖かさを感じたいという思いがあったのかもしれませんね。

この活動はどんどん広がって、今では、こども家庭庁が「秋のこどもまんなか月間」の取り組みのひとつとして、毎年11月に「オレンジリボン・児童虐待防止推進キャンペーン」を実施しています。そして、「あなたしか 気づいてないかも そのサイン」(2023年度)などの標語を募集するなど、期間中は、児童虐待防止のために、全国で集中的な広報・啓発活動に取り組んでいます。

2.虐待への取り組みの難しさ

「虐待」という言葉からはとてもきつい感じを受けますね。虐待の代わりに、「不適切な関わり-maltreatment-マルトリートメント」という言葉を使うのがいいのでは、という人もいますが、内容がはっきり伝わらない不安があります。「虐待」ではなく、もっと柔らかな表現がなかったのかと思ったりしますが、なかなか適切なことばが見つかっていません。

心配なのは、「虐待」という言葉の内容も、まだはっきりと伝わっていないことです。ちょっと子どもに厳しく当たったのを「虐待」と決めつけられて、一生懸命に育児している日頃の努力が、すべて否定されたように感じてしまう人がいるかもしれません。逆に、心から子どものためを思ってしつけをしているのだからと、「虐待」に気づかないこともあるかもしれません。そんなとき、何が虐待かがわかれば、気づきにつながって、子どもとの接し方が変わることもあるでしょう。また、虐待かしらと迷っていること、困っていることを話すことで、気持ちが落ち着くこともあるでしょう。そのために、なんとか「ひとつひとつを一緒に考えていきましょう」という気持ちで、これから虐待についてお伝えしようと思います。

実を言えば、直接にお顔を見ないで「虐待」についてお話しすることも、危険なことだと思っています。例えば、「子どもを叩いてはいけませんよ」と言っても、具体的にどんな行為と受け取るかは、本当に十人十色だからです。もっと正確に言えば、体罰と虐待の違いもはっきりと伝えられていないように思います。体罰は法律で禁止されましたが、体罰とはどこまでを意味するのでしょうか。体罰はどんな軽いものでも、すべて虐待になるのでしょうか。そういう疑問を持たれている方も多いのではないでしょうか。

これから、5回にわたって、子どもの虐待についてお伝えしようと思います。第1回は「オレンジリボン・キャンペーン」(この回です)、第2回「虐待ってなに?」 第3回「昔の子どもたちは・・」、第4回「児童虐待の現状」、そして最後の第5回「体罰のない子育て」と続く予定です。