知って得する!心理士がひも解く!子どもの本からのメッセージ ~『北風と太陽』~

子どもの頃にイソップ物語(寓話)を聞いたことがある人は、多いと思います。

イソップ物語の成り立ちの歴史は古く、紀元前6世紀にアイソーポス(イソップ)が作った例え話(寓話)を集めたのが始まりだと言われています。

イソップ童話の登場人物は、動物・生活雑貨、自然現象、人と言うように日常生活に身近にあるもので出来ています。そのため、子どもから大人まで自然と想像しながら話を聴け、人から人へと語り継ぐことができました。

日本でイソップ童話が出版されたのは、江戸時代初期です。

『伊曾保物語』と言う名前で普及していきました。『伊曾保物語』は、日本オリジナルの物語も加わっているのが特徴です。明治時代になると、ベストセラーになり教科書などにも取り入れられるようになりました。

今日は、『北風と太陽』を取り上げ、皆さんと“メッセージ”を紐解きたいと思います。

目次

1:北風と太陽

2:北風と太陽のメッセージ

3:まとめ

1:北風と太陽

北風と太陽のお話をご紹介します。

『北風と太陽』

ある朝、北風と太陽が二人のうちどちらが強いか言い争いを始めました。さんざん議論したあげく、それじゃ試してみようということになりました。最初に旅人のマントを脱がした方が強いということにしょうと決めました。

北風は力のかぎり息を吹きました。ますます強くはげしく吹いたので、木が地面から引き抜かれてしまいそうになるほどでした。ところが北風が吹けば吹くほど、旅人はマントを強く引き締めるのでした。

やがて太陽が姿をあらわしました。そのやさしくつつみこむような光があたりを輝かせると、旅人はあたたかくゆったりした気分になって、マントをあっさりと脱いでしまいました。こうして太陽の方が強いと決まり、それ以来、力づくでねじふせるよりも、相手に納得させるほうがよいということになったのでした。太陽のやさしく心地よい接し方のほうが、北風の情け容赦のない乱暴な力よりも、人の心にずっと深く入り込んだのでした。

 

『365日のベッドタイムストーリー』より

2:北風と太陽のメッセージ

①厳しさと温かさ

『北風と太陽』は、“厳しさよりも優しさが勝る”というメッセージを含んでいる物語です。

このメッセージは、私達の生活の中でも十分活用することが出来ます。

物語では、北風の厳しさが強くなると旅人がコートを脱がなくなりました。私達の生活でも“伝えたい”という想いなどから「厳しく接しすぎてしまう」「思いを押し付けてしまう」と、相手は旅人と同じように心を閉ざししまいます

また、太陽の温かさは旅人のコートを脱がすことが出来ました。私たちの生活も「見守る」「包み込む」という姿勢は、信頼関係の形成や安心感を与えるため、相手は旅人と同じように心を開いてくれます。

人に伝えるとき、ついつい自分の想いを“伝えること”に意識が向きがちになってしまい、伝わらないとイライラしたり、悲しくなってしまったり、あたりが厳しくなってしまうこともあると思います。

自分の気持ちは、想いの押し付けでは伝わりません。相手に伝えようと思った時は、太陽のような“相手を思いやる温かさ”や“優しい言い方”を大切にしてみるのは、いかがでしょうか。

②北風と太陽の両方があるから価値がある

北風と太陽でもう1つ重要なことは、“北風と太陽の関係”です。

旅人がコートを脱いだのは、厳しい北風と温かい太陽の2つが競い合ったことにあります。

皆さんは、「味方」と聞くと、どのような人を想像しますか?味方というのは、褒めてくれたり、甘えさせてくれるだけでなく、厳しいこともその人の事を思い伝えてくれる、両方の要素を持っていることが重要です。

厳しさと温かさが両方あるからこそ、両方の価値が高まります

例えば…

厳しい北風が吹く寒い季節があるから、春が来るのが待ち遠しくなります。

温かい日の光を感じる季節があるから、冷たい風を感じると季節の移り変わり(時間の流れ)を感じることが出来ます。

物事や人は、ひとつひとつに役割があり、良い点も課題点もそれぞれあります。

『北風と太陽』は、プラスとマイナスの要素に気付かせてくれる作品でもあります。

人も同じで、“温かさ”は安心感を与え癒してくれるもので「人を包む」時に重要なものになります。そして、“厳しさ”は可能性を刺激し時に「人を導く」強さがあります。

3:まとめ

どうでしたでしょうか?

「『北風と太陽』を思い出してください。太陽が北風に勝ったように、愛情は何物にも勝ります。まずは愛情を注いで関係を作ってみてください。愛情を注いでから、ゆっくりと色々な事を伝えていけば良いと思います。愛情を感じ信頼関係が出来ると、「この人の話は聞こう」と思え、耳を傾けるようになります。でも、優しさだけではダメ。時には、厳しさが人を育てることもあります。人を育てる時は、温かさと厳しさのバランスが重要です。」

私は、講演の中でこんな風に伝えています…

子育て、保育、ビジネス、友人関係の中で、『北風と太陽』の関係を意識してみると色々と見えてくるものがあるかもしれません。

≪引用参考文献≫

クリスティーヌ アリソン 2005 365日のベッドタイムストーリー 飛鳥新社

Wikipedia 『イソップ寓話』https://ja.wikipedia.org/wiki/イソップ寓話