新しい環境で上手に人間関係を築く4つの方法

こんにちは。対人関係療法を専門にカウンセリングを行っています、島崎です。

4月になりましたね。たくさんの新中学生、新高校生、新大学生、新社会人の方々おめでとうございます。新しい出会いが増えるこの季節、胸が高まりますね。そして、お子さんが新たな一歩を歩み始めるということは、ご家族にとっても大きな変化になります。

4月から新しい職場で務める人もいますね。

また、4月から先輩になる人、上司になる人もいますね。

人間関係を築くことが得意な方にとっては楽しみな季節ですが、人見知りの方、人間関係を築くことが苦手な方にとっては不安を感じやすい季節だと思います。

Biz note (2020)によると、社会人1年目の仕事の悩み2位は「人間関係が上手くいかない」、3位は「いつも上司や先輩に怒られる」でした。2位3位ともに3割の方が人間関係に悩みを抱えていることが分かりました。そして1位は、「残業が多い」でした。一見すると残業が多いことと人間関係は関係がないように思われるかもしれませんが、周囲に助けを求められないという視点から見ると人間関係の悩みと言っても過言ではないように思います。

人間は社会的な生き物なので、人と関わりながら生きていきます。

今、人間関係にストレスを感じている方、もっと楽に人と関わりたい方もいくつかのポイントを知ることで人間関係がずっと楽になります。

今回のコラムでは、新しい環境で上手に人間関係を築く方法をお伝えしたいと思います。

目次

1. 自分の敷地、相手の敷地を考えてみよう
2. “今”に集中してみよう
3. 自分の感情や相手の感情に素直になろう
4. 相手に嫌な想いをさせずに、自分の気持ちや意見を伝える練習をしよう

1.自分の敷地、相手の敷地を考えてみよう

人と良好な関係を築くためには、相手にとっても自分にとっても居心地が良いと思える環境を作ることが大切です。そのために、自分はどこの敷地にいるのかを考えてみましょう。

敷地とは?

敷地とは、個人が持ち運んでいるテリトリーのようなものを意味します。心理学用語では、「パーソナルスペース」と言います。パーソナルスペースは、他人との物理的な距離を示すと共に心の距離も示します。パーソナルスペースが保たれている場合、人は安心して過ごすことができます。しかし、他人がこのパーソナルスペースに入ってくると人は不快な思いをします。

この敷地は目に見えないため、知らず知らずのうちに自分の敷地に誰かが入ってきたり、相手の敷地に自分が入っていたりすることがあります。

例えば、初対面で聞かれたくないプライベートな話を聞かれると人は詮索された気持ちになり、不快な気持ちになります。その他にも、ちょっとした動作や発言で“決めつけ発言”をされる、関係性が出来る前に媚びを売られることも相手にとっては不愉快な場合があります。相手が不快な感情を持つということは、相手の敷地に入っているということになります。

良い人間関係を築くためには、自分の敷地も守っていくことが必要です。

自分の敷地を守るということは、自分の敷地を明確にしていくことが大切です。どういうことかと言うと、自分の問題なのか、相手の問題なのかを分けて考えるということです。

例えば、相手の機嫌が悪そうな場合

自分の敷地が明確な場合:“何かあったのかな?”“今はそっとしておいたほうがいいかも”

相手の敷地に入る場合:“私が何かしたかもしれない”“どうにかして機嫌をとらないと”

相手の反応は同じでも、自分の敷地にいるか相手の敷地にいるかによって感じ方は大きく変わってきます。

相手の敷地に入っている状態は、自分の気持ちよりも相手の気持ちを優先し過ぎたり、相手がどう思っているのかで頭がいっぱいになったりしてしまいます。

自分の敷地にいながら相手の敷地を尊重するということは、本当の意味で相手の感情を尊重し、どこまでなら自分が不快な気持ちを持たずに相手に接することができるか考えるということになります

気持ちがモヤモヤした時は、まず自分が今どこの敷地にいるのか考えてみましょう。

2.“今”に集中してみよう

私たちは学習する生き物です。そのため、人と話す時についつい過去のデータを検索してしまいます。“この人はこういうタイプの人だ”、“この人苦手だった人に似ている”と言うふうに、相手との会話よりも過去のデータとのすり合わせを重視している人は案外多いです。また、相手の話を最後まで聞く前に、自分の過去の出来事を思い出して、「それは良いことだね」、「なんて酷い出来事なの」と、相手の気持ちを勝手にジャッチすることもあります。

これらは、“今”ではなく、過去を優先しています。

目の前にいる人は、まだ会ったばかりの人です。どんな環境で育ち、どんなふうに生きてきたのかは分かりません。過去に出会った人と似ていたとしても100%同じ人ではないのです。

先入観に縛られて、仲良くなれそうな相手との関係がギクシャクするよりも、目の前にいる人との時間を集中するほうが、ずっと居心地の良いものになるでしょう。

3.自分の感情や相手の感情に素直になろう

他者と同じ出来事を同時に経験しても、その時にどのように感じるかは人それぞれです。他者の感情や意見に恐怖心や劣等感を持つ人は、他者と同じ意見でなければならないという考えがあるかもしれません。しかし、私たちがどのように感じるかは自分で決めていいことです。それは、他者に否定される筋合いのない守られた権利だと思います。そして同じように、相手がどのように感じていてもそれはその人にとって正解の感情です。

1でお伝えした「自分の敷地」が分かってくると自分の感情も相手の感情も不安にならずに受け入れられるようになってきます。まずは、自分がどんな気持ちなのかに焦点を当ててみましょう。

4.相手に嫌な想いをさせずに、自分の気持ちや意見を伝える練習をしよう

①自分が1番言いたいことを整理して話をしよう。
上司や先輩が忙しい場合、手短に要件を伝えることが必要になります。基本的には5W1Hに当てはめて、誰が聞いても内容が分かるように話をします。
②主語を「私」にして話す。
コミュニケーションスキルの1つに“I message”“YOU message”いうものがあります。
これは、相手の敷地に土足で入らないための方法です。
I messageとは、自分を主語にして相手の敷地に入らないように発言する方法です。
一方、YOU messageの場合は、無意識に相手の敷地に入り、不快にさせてしまうことがあります。
例えば、上司から「資料まだ出来てないの?」と聞かれたとします。
この上司の発言は、YOU messageです。なぜかと言うと、この発言には“出来ていて当たり前”という上司の希望と、“今すぐ作って”という曖昧なメッセージが含まれているからです。
この言い方の場合、人によっては不快な感情から攻撃的な返事をされてしまうかもしれませんし、人によっては出来ていないことを必要以上に責めてしまう人もいるかもしれません。
一方で、I messageの場合は、「私が今日中に資料を確認したいから、急ぎで作ってくれないかな?」という伝え方になります。自分がどうしたいかを明確にし、お願いする言い方になります。
この言い方であれば、威圧的な印象は低くなり、相手を責めることなく自分の伝えたいことも伝わります。

言い方や考え方はすぐに変わるものではありません。しかし、意識し、実践を続けることで少しずつ自分らしい人間関係が築けます。無理をし過ぎず、試行錯誤を重ねながら、安心できる関係を構築してくださいね。

皆さまにとって、新しい場所で素敵な出会いがありますように。

参考文献

Biz note、「社会人1年目が抱える仕事の悩みとは?メンタルヘルスのプロが解決法を紹介します!」(2020年2月26日)〔https://biz-note.jp/worries-1st-year/〕(最終検索日:2020年4月5日)