デジタルネイティブ!?子どもの発達をデジタル器具は、邪魔をする!part2

3月のコラム(http://kompeitou.com/column/digital-native/)では、「2歳児未満の子どもに動画を見せないように勧告!?」「子育ては、デジタルに任せてはいけない」の2つを取り上げ、子どもがデジタル器具を使うリスクについてお話をしてきました。

今回は、Part1に加え、「どのような影響があるのか」「これからどうしていけばいいのか?」ヒントをお伝えしていきたいと思います。

目次

1: 子どもに与える影響

2: デジタルネイティブ時代の家庭へのヒント

1:子どもに与える影響

 メアリー・エイケン(2018)は、著書『サイバー・エフェクト 子どもがネットに壊される』(https://www.diamond.co.jp/book/9784478101964.html ダイヤモンド社)の中でデジタル器具が子どもに与える影響について、詳しくまとめています。

最近、私の講演でもメアリー博士の内容をお伝えする事が多くあります。

今日はいつも講演でお話する中から、皆さんに“デジタルの世界が子どもに与える影響”を2つご紹介します。

①:子どもにとって愛情を感じる時間が少なくなる

子どもは、大人から愛情を感じる事の積み重ねで、安心・安全を感じ様々なことに挑戦できるようになっていきます。

大人にとってもスマートフォン、タブレット、PC等あらゆるデジタル器具は常に側にあります。決して生活から切り離すことが出来ないものですが、「大人がどのようにデジタル器具と付き合うか」は、「子どもの人生に影響をどの程度与えるか」と言い換えることが出来ます。

いきなりですが、ここで質問です。

Q:食事の場面(外食も含む)で、あなたが子どもより先に食べ終わりました。その時、いつものあなたならどのような行動をしますか?次の選択肢から1つ選んでください。

1)「おいしいね」等、子どもに積極的に会話をする。

2)スマートフォンでネットサーフィンや、メッセージの返事、ゲームをする。

3)何となくボーしながら、子どもを待つ。

4)席を立ち、洗い物など家事を先にしてしまう。

皆さんは、どれを選びましたか?

実は、2)の答えの人が最近増えているという結果があります。子ども(小児)を対象とした研究(2014)では、50人中40人の保護者に授乳中や食事中のスマートフォンいじりが見られたという報告がされています。

私もフードコートなどに行くと、“孤食”が多いことに驚きます。大人が食べ終わり、子どもがまだ食べている時、スマートフォンを操作している大人や、子どもが「おいしいね」等話しかけているのに空返事を繰り返す大人先に席を立ってしまう大人等、気持ち的にも物理的にも“一人での食事=孤食”の子どもが増えてきていることに違和感と危機感を覚えます。

「大人がデジタル器具に時間が取られること」がなぜ問題か考えてみましょう。

それは、「アイコンタクトの時間が減る」という事が危険視されている理由になります。愛情を伝える方法は、様々です。有効な方法の1つに“アイコンタクト”があります。目線を子どもと合わせる事は、子どもと信頼関係を築くための重要な行動です。

この信頼関係構築の方法は、0歳児の子どもから使えるものです。言葉だけでなく、目線を合わせる事で伝わる事も多くあります。

大人がデジタル器具に時間を費やしすぎてしまうと、どうしてもモニターばかり見てしまうため、子どもと目を合わせる時間も自動的に減り、“伝え合う時間”が少なくなります。

その環境の中で成長していくと、子どもが常に孤独を感じている姿や、「見てほしい」と言う気持ちを行動(問題行動、注目を引こうとする行動)で表現する姿親子の絆が不安定のまま成長する姿が容易に想像できます。

皆さんはどうですか?

子どもとの時間をいつの間にかデジタル器具に独占せれている事は…ありませんか?

②:不器用さや社会性の低さが目立つ

PCやタブレット、スマートフォンなどのアプリケーションは、とても優れているものが多くあります。最近では、子ども向けのアプリケーションが増え、大人顔負けの操作をする子どももいます。

魅力的なアプリケーションも多くありますが、あくまでもデジタル器具を通した体験は、“非現実的な体験”になる事を忘れてはいけません。画面上で出来る事と現実では、“差”があることを理解しておく必要があります。

【不器用さについて】

デジタル器具ばかり使っていると、不器用になりやすいと言われています。

例えば、

☆画面の中で上手に積み木が高く積めても、現実でその子が高く積めるとは限らない。

☆画面の中では運動神経が優れていても、現実でその子の運動神経が良いとは限らない。

など…

デジタル器具を操作している時は、視覚運動機能を活用しているので運動神経を使っているわけではありません。デジタル器具を使っている時間が長くなると、運動不足になりやすく、実際に握力や手や足を動かす力が落ちているという報告もあります。

優れた技術で作られているデジタルの世界は、子ども自身に「体験した」という“錯覚”を起こします。しかし、現実でそれが出来るわけではありません。

 

「タブレットは、できるものが多いから、タブレットがあれば玩具はいらない」ではなく、大人が「玩具は実体験で使える貴重な物」と考え、子どもの興味関心に合わせて使い分るのをお勧めします。

玩具には、現実でしか感じられない“遊びの価値”がたくさんあります。

ぬいぐるみの温かさ、積み木を握る感覚、太鼓を叩くと鳴る音の違い、絵本をめくる時の紙の感覚、砂を掘る時の砂の重さ等デジタルにはない良さがたくさん玩具にはあります。

【社会性の低さについて】

デジタルの世界と現実の世界では、大きな差があります。不器用さだけでなく、社会性の発達でも心配されます。

例えば、

☆何度もやり直しができる。そのため、待つことや我慢することが苦手。

☆一人で遊ぶ内容も多いため、順番などを意識する事が少ない。

☆ボタンを押せば進める・攻略パターンが決まっているなど、解決方法が決まっている場合が多い。

など…

デジタル器具が中心になってしまうと、共感する力、社会的能力、問題解決する力等“非認知的能力”を阻害する恐れがあると言われています。子どもがモニターを見ている時は、“子ども対モニター”という1対1の時間が長くなります。

実体験での体験は、“ボタンを押せば答えが見つかる”と言うような単純な構造ではありません。例えば、考えること・予想外のこととの出会いや発見・友達との関り・我慢をすること・愛し愛される経験など子どもの周りにある実体験には、多くの経験のチャンスが溢れています。

現実は、構造化されていない世界だからこそ、創造的な遊びに時間をかけて想像力を働かせることで身に付くことが多くあります。

2:デジタルネイティブ時代の家庭へのヒント

ここまで、デジタル器具の落とし穴についてお話をしてきました。発育発達の専門的な視点から見直しても“子どものデジタル器具の使用を推奨”することは出来ません

しかし、デジタル器具をいきなり使わないようにすることは難しいことであり、デジタルの世界には、マイナスな面だけでなく疑似体験が出来たり、理数系の力が付いたりと魅力も多くあります。

重要なことは“使いすぎずバランスを取る事”です。

最後に、デジタルネイティブ時代どのようにデジタル器具と家庭が付き合っていけばいいか、いくつかヒントをご紹介したいと思います。

【デジタルネイティブ時代の家庭へのヒント】

① 本物の人間に代わるものはない。

(愛情が何よりも勝る。機械は、親に代われない。)

 

②低年齢の時こそ、五感を刺激する事で育つものが多い。

(身近なものが子どもにとっての“おもちゃ”になる。人間は、赤ちゃんから体験した事が

脳へ書き込まれる。)

 

③ルールを設定し、画面を見せる。

(2・3歳までは、画面を見せないことが推奨されている)

 

④保護者は子どもの前では、携帯やデジタルに触れている時間に気を付ける。

(子どもとアイコンタクト取れているか、きちんとフェイスタイムを取れているか。)

 

⑤ 使うのなら、子どもとのスキンシップの時間にする作戦も!

(膝にのせたり、話しかけたり、一緒に)

参考: Mary AikenPhd;2018

今回のコラムの内容と3月のコラム(http://kompeitou.com/column/digital-native/)の内容を活用し、ぜひデジタルネイティブの子ども達と充実した時間が過ごせますように。

【引用・参考書籍/動画】

WIRD NEWS 2011 To Protect Baby’s Brain, Turn Off TV https://www.wired.com/2011/10/infant-tv-guidelines/

Mary Aiken,PhD 2018 A Pioneering Cyberpshychologist Explains How Human Behaviour Changes online  子どもがネットに壊される ダイヤモンド社