倫理観と勤勉性を育む子育て(学童期)

前回は、幼児期についてお話をしました。

体験を通して主体性を育む子育て(幼児期)

今回は、学童期の子どもたちの様子についてお話したいと思います。

学童期は、ちょうど、小学校に通う時期(小1~小6)にあたります。

小学校の学年の分け方としては、「低学年(1~3年生)」と「高学年(4~6年生)」の大きく2つに分ける見方と、「低学年(1.2年生)」「中学年(3.4年生)」「高学年(5.6年生)」の3つに分ける見方があります。

個人差も大きい時期ですので、ここでは、丁寧に3つに分けて見ていこうと思います。

目次

1.自分の気持ちを優先する1.2年生
2.人の目が少し気になる3.4年生
3.相手の気持ちを理解する5.6年生
4.結果ではなく過程に目を向けた子育てをしよう

1.自分の気持ちを優先する1.2年生

小学生になると、大人たちはつい、「もうお兄さん(お姉さん)になったのだからしっかりね」等と声をかけてしまいますが、就学は1つの「区切り」でしかありません。

低学年は、まだまだ幼児期の特徴を残している時期なので、倫理観は周囲の大人の姿から学んでいきます。「大人が『ダメ』と言うことをしてはならない」というように、ルールを守る中で、少しずつ自分自身で善悪についての理解と判断ができるようになります。

また、彼らの世界は「身近な環境」が中心。交友関係も「席が近い」「家が近所」など、自分にとって近い存在と交流をします。席替えをするたびに親しい友だちが変わるなどということも、この時期にはよくみられます。「生活科」の授業では、「身近な環境」を通して、学びの土台をつくっていきます。

この時期の子どもたちに「あなたってどんな子かな?」と尋ねると、外見的な特徴や属性を挙げる子が多く、これは「自分自身への概念(自己概念)」がまだ内面には向いていないことを表しています。

自分の気持ちを優先しがちなので、相手の立場が分からず友だちとケンカになることもありますが、身近な人や物との出会いや交流を通して自分を探求し、少しずつ他者の気持ちにも目が向けられるようになっていきます。

2.人の目が少し気になる3.4年生

中学年になると、仲間とのつながりが深くなっていきます。この時期の交友関係は「ギャングエイジ」ともいわれます。仲間との約束を重視する姿、決まったグループで閉鎖的に遊ぶ姿を見ると、大人は少し心配になってしまいますが、この時期の仲間で行動する経験は、社会性の発達を促進します。集団内で自分の立ち位置を知り、仲間に認めてもらえる喜びを感じることは、自己概念の形成にもつながっていきます。

この頃になると、外見などの外側からの自分概念だけでなく、自分の感情や態度など心理的な部分にも目を向けることが出来るようになります。

9歳以降は、物事をある程度対象化して認識することができるようになります。対象との間に距離をおいた分析ができるようになることで、知的な活動においてもより分化した追求が可能となります。自分のことを客観的に捉えられるようになる一方、発達の個人差も顕著になる時期で、「9歳の壁」と呼ばれています。

幼児性が抜け、体格も大きくなることで「もう大丈夫」と目を離しがちになる時期でもありますが、周囲の大人は、個人差が大きいことを踏まえた上で、子どもの困りごとに気づけるよう、温かく見守ることが大切です

3.相手の気持ちを理解する5.6年生

高学年は、抽象的な思考力が高まる時期です。自己概念の視点も広がっていき、多面的に自分を把握することが可能になります。また、他者と自分を比較することで自己に対して否定的な見方をする一方、他者への共感も深まります。

自分や他者を客観視できるようになるため、大人の理不尽な行動に気づき、「先生が言うことが絶対正しい!」ではない価値観が生まれ、葛藤することも。

また、クラブ活動や児童会活動など、集団の一員として学校におけるよりよい生活づくりに参画する経験を通して、社会性を促進していきます。

対人関係能力や社会的知識・技能が向上する(敵対する者も含めた同年代の者とのつきあいを学ぶ)時期でもありますが、これは経験の上に成り立つもの。

「あの子とは遊んじゃ駄目よ」などと、大人の想いをぶつけて子どもの交友関係を狭くするのではなく、子どもを見守り子どもの想いに向き合うことで、子どもの経験も担保しながら、親子の信頼関係を深めることが出来たら素敵ですね。

4.結果ではなく過程に目を向けた子育てをしよう

学童期は、全体を通して「勤勉性」が育つ時期です。発達心理学者のエリクソンは、学童期を「勤勉性 対 劣等感」という言葉で表しました。

勉強に限らず、自発的に何かに取組み、意欲をもって頑張る経験によって、「勤勉性」は育まれます。この時期にうまくいかない経験や、努力を認められない経験が多いと、「劣等感」を持ってしまいます。子どもの近くにいる大人たちは、「見守ること」「励ますこと」を大切にかかわっていきたいですね。

その際はぜひ、結果ではなく過程に目を向けましょう。

「できたこと」「できなかったこと」よりも、「頑張ったこと」「諦めなかったこと」に着目した言葉かけをすることで、子どもは自己肯定感を高めていきます。

次回は「青年前期(中学生)」と「青年中期(高校生)」についてお話しようと思います。

参考資料:

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/053/gaiyou/attach/1283165.htm