イライラから解放される3つの方法

こんにちは。対人関係療法を専門にカウンセリングをしています、島崎です。

梅雨が明け、暑い夏がはじまりました。

夏は冬に比べると、日照時間が長いため、早起きしやすくなったり、楽観的になったりします。しかし、気温が高くなり過ぎることから、冷静に判断することが難しくなる、イライラしやすくなるとも言われています。今回のコラムでは、イライラに振り回されない方法についてお話したいと思います。

本題に入る前に、夏のイライラ対処法についてさらりとお伝えしたいと思います。

・夏はイライラしやすい

暑さというのは不思議なもので、暑いだけで体力が奪われイライラしやすくなります。

1秒でも早くイライラを落ち着かせたい人は、まず、「イライラ」しているのか「暑い」のか考えてみてください。暑さとイライラは感じ方が似ています。暑い場合は、涼しい所に避難するか、冷たい水を飲む・冷たい食べ物を食べて意図的に体を冷やしてください。

もし、疲れてイライラしているのであれば仮眠をとってください。

この方法は、大人だけではなく子どもにも有効です。親子喧嘩をするときは、まずクーラーをつけてアイスを食べてから話し合いしてみてください。いつもよりも落ち着いて話しができるかもしれません。

暑さとは関係なく、心がイライラしているという方は、何が起きているかを整理していきましょう。

目次

1. 人は自分を守るためにイラッとする
2. イライラが持続するメカニズムを知ろう
3. イライラを手放すには

1.人は自分を守るためにイラッとする

イラッとする頻度やイラッとした時の反応は人によって違いますが、人は必ずイラッとする生き物です。「イラッとする」と言うと、ネガティブに捉えられやすいですが、「怒り」は、自分の身を守る防衛本能の1つです。“感情”というと、人間性の問題として片づけられてしまうことがありますが、氷を触った時に冷たいと感じたり、紙で手を切って痛いと感じたりすることと同じように、危険だと感じると、人は反射的に「怒り」を感じます。そうして、私たちは危険な目にあわないように身を守っているのです。

それでも、すぐにイラッとする自分を変えたいと思っている方が多いと思います。しかし、明らかに理不尽な目にあっているのに何も感じないよりも、理不尽だと感じてイラッとしているほうが自分を尊重している気がしませんか?

「イラッ」は自分を傷つける感情ではなく、自分を守るための感情であると分かれば、怒りにも向き合いやすくなります。

そもそも、人は何故「イラッ」とすると嫌な感じがするのでしょうか?

2.イライラが持続するメカニズムを知ろう

私たちが困っていることは、イラッとすることよりもイライラが持続して、気力体力が奪われることにあります。イラッからイライラに変わると、人はコントロールが難しくなります。

人は、「自分の常識」と「相手の常識」が違った時に一時的に強い違和感を覚えます。“違和感”とは、起きた出来事に「なんで?」と感じることです。その感情を「違和感」と表現できればイラッとすることも少なくなるかもしれませんが、強い違和感の場合、「イラッと」する感情が沸き起こります。

例えば、仕事は期限内に行うものだと思っている人が締め切りを守れない相手に強い怒りを感じるのは、「仕事は期限内に行うべき」だという自分の常識と締め切りを守れない相手の行動の違いに強い違和感を覚え、「なんで?」と思ったからです。

その時に、相手が致し方ない理由を話したり、納得できるまで説明をしたりすれば、状況が整理され、「イライラ」は軽減するかもしれません。

しかし、相手の真意も分からないまま、自分の常識が否定されたように感じると、人はコントロール感覚(思い通りになると感じること)を失い、困り感を抱きます。怒りは自分の身を守っていますから、忘れるとまた同じ目に合うのではないかと思うと、イライラを手放すことに恐怖を抱きます。そして、イライラを保持することになるのです。

3.イライラを手放すには

それでは、どのように自分のコントロール感を取り戻していけばよいのでしょうか。

冷静に考えてみれば、1つの出来事に困らされ、さらにそのことで長時間、気力や体力を奪われると考えるとなんだかやりきれない気持ちになります。

ここでは、イライラを手放すためのステップをお伝えします。

イライラを手放すための必要なステップ

STEP1 自分の気持ちを肯定する→誰よりも自分を主体にしていたわる

イライラを手放せない理由は、イラッとした後に、主語が自分から相手に切り替わることにあります。

先ほどの締め切りの例で説明すると、「相手はどうして締め切りを守らなかったんだろう?」「締め切りを守らないなんて、あの人は社会人としてどうかしている」等です。主語が相手になっています。

一方で、主語を自分に変えてみると、「今日中に片付くと思っていた仕事が終わらなくてすっきりしない」「相手が締め切りを守らないと私の仕事の予定が変わって困る」「あの人を信用して仕事を任せたからこそショックが大きい」等が挙げられます。主語を自分にすると、相手の行動に自分がどれだけ困っているかが分かります。

感情は自分を守るためにあるので、とことんショックさ、悲しさ、悔しさを感じてください。自分の気持ちに「そんなふうに思う自分って心が小さい」などとは思わないでください。繰り返しになりますが、自分の感情はあなた自身を守るためのものです。感じ方に間違いはありません。

1つ気をつけてほしいこととしては、相手を主語にしたままでは、いつまでたっても自分をなぐさめる行動に移動できないということです。必ず主語は自分を変えてください。

誰よりも自分が傷ついて困っていることを受け入れる。

STEP2 状況を整理する

自分の感情をとことん受け入れた後に、ようやく取り掛かることが“状況の整理”です。怒りが収まらない人の中に、1を飛ばして2を行う方がいますが、怒りを我慢した状態で状況の整理をしようとすると怒りは膨張しますので、必ず1をしてから2に進んでください。

状況を整理するというのは、相手に自分の正しさを教えるために証拠を集めることではありません。

ここで行っていただきたいのは、何が起きたかを振り返るということです。

自分の常識と相手の常識は同じなのか。

「一般常識」と言う言葉は人によって全然違います。自分の一般常識は社会の一般常識に違いないと思っている人は「べき」思考が強くなり、ルールを守らない人に強い怒りを感じます。相手の常識と自分の常識は同じなのかを知ることで関わり方が変わります。

自分の期待は相手の能力と一致しているのか。

幼稚園生の子どもに中学生の問題を解きなさいと言ってもそれは難しいと分かるのは、相手の能力がどれくらいなのかを無意識のうちに予測しているからです。しかし、年齢が上がるにつれて、相手の能力を自分基準で考えることが増えます。「これくらい理解して当然」というのは、実際は相手の能力からすると非常に難しい要求かもしれません。また、当然だと思うばかりに言葉が足りていなかったのかもしれません。理由が分かったり、次の対策が見つかったりすると人は安心します。

→状況が整理されるとイライラが軽減する。

STEP3 自分を主語にして、「今」に集中する

イライラとは、まるで今ここで起こっているような錯覚を起こしますが、実はもう過去のことです。突然人にぶつかられたり、理不尽に怒られたりしたのは、過去の出来事です。過去に立ち止まるか、今に集中するかは自分で選ぶことができます。今に集中したいのにそれが出来なくて困っている方は、ヨガやボルダリングなど体を動かしてみてもいいですし、塗り絵や習のような黙々と取り組めることを取り入れてみても良いと思います。

→今に集中することは自分で選ぶことができ、それがコントロール感覚を取り戻すことにつながる。

怒りというのは、その時は一生許せないと感じるような強い想いであったとしても、いずれか「自分に新しい視点をくれた」と感じる日がきたり、相手と同じような立場になったときに、「こんな思いだったのかな」「こういうことを伝えたかったのか」と気づいたりします。今は傷ついた自分の気持ちを十分に肯定し、そして新たな気づきを得た時はさらに成長できると考えると、人生とは一瞬一瞬で完結するのではなく、積み重なった流れの中で深まっていくのかなと思います。

大切なことは、「自分の感情を肯定する」ことと、「“今”の行動は、自分で選べる」ということです。

いつの日か怒りが成長に変わることを願って。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

参考文献

水島広子 2018 イライラを手放す生き方 さくら舎