前回は、学童期についてお話をしました。
http://kompeitou.com/column/ethics-and-diligence/
今回は、青年前期(中学生)と青年後期(高校生)の姿についてお話したいと思います。
個人差はあるものの、小学校の高学年頃から、性ホルモンの分泌が盛んになり、心と身体がぐっと大人に近づく時期に突入します(第二次性徴期)。
女子は、胸が大きくなり初経を迎え、男子は、発毛や声変わり、精通が起きます。自分の身体に起きる突然の変化に不安や戸惑いを感じることも多く、身体と心のバランスを取ることが難しい時期でもあります。
いわゆる「反抗期」といわれるような姿も多く見られ、子育てが難しいと感じることも増えてくるかもしれません。
そこで今回は、この時期の子どもの心の発達に目を向けて、子育てのヒントをお伝えしたいと思います。
1. 青年期全体を通した成熟に戸惑う気持ちを支えるかかわり
2. アイデンティティの揺らぎが大きい青年前期(中学生)
3. 精神性が高まる青年後期(高校生)
1.青年期全体を通した成熟に戸惑う気持ちを支えるかかわり
学童期後半から青年期に入る頃は、性ホルモンの影響で身体がぐっと大人に近づく時期ですが、身体の変化に心が追い付かず、戸惑いや不安を感じることも多い時期です。
第二次性徴は個人差も大きいので、他者との比較をして自分の身体を恥じたり、変わりゆく自分の身体を恐ろしく感じたり、大きく心が揺れることもあります。
子ども自身が身体の変化を肯定的に捉えられるよう、同性の親(または近しい大人)が上手にかかわることで、安心感を与えてあげたいですね。
またこの時期は、身体の変化に合わせるように性意識も高まり、異性への興味関心も高まる時期でもあります。
それは当然の変化であって、汚らわしいことでもなんでもないのです。
性的な興味に関しても「見守る姿勢」を大切にすることで、親の見えないところでエスカレートすることを避けることもできます。
本人が負い目や引け目を感じたりすると、隠れて行動をするようになり、その結果、性犯罪などに巻き込まれるなど、かえって危険です。
自分の身体を大切にすることを含めて、正しい理解を促しつつ、不安な気持ちに上手に寄り添いましょう。
大事なことは彼らの「良き理解者」であること。
「良き理解者」には、困ったことがあっても隠さずに「相談」ができます。
2.アイデンティティの揺らぎが大きい青年前期(中学生)
中学生くらいから、子どもたちは大人との関係よりも、友人関係に自らへの強い意味を見いだすようになります。
親しい仲間からの評価を強く意識する時期でもありますが、自分への自信のなさから他者との交流に消極的な傾向を示す子も。
そのため、不登校の子どもの割合が増加するなどの傾向もみられます。
令和2年度不登校児童生徒の実態調査(文部科学省)によると、「学校を休んでいる間の気持ち」(複数回答)は、「ほっとした・楽な気持ちだった」(小学生70%、中学生69%)、「自由な時間が増えてうれしかった」(小学生66%、中学生66%)が一定の割合を占めた一方で、「勉強の遅れに対する不安があった」(小学生64%、中学生74%)、「進路・進学に対する不安があった」(小学生47%、中学生69%)「学校の同級生がどう思っているか不安だった」(小学生64%、中学生72%)と回答した割合も高く、不登校児童生徒が抱える様々な不安が明らかとなっています。
「不安」という感情は、心身の様々なことに影響を及ぼします。
「不安」を和らげてくれる人、「不安」を忘れさせてくれる趣味など、安心できる居場所をいくつか持てるとよいですね。
周囲の大人は、子どもと大人の狭間にある中学生の姿を尊重しつつ、よき相談相手となれるように心がけたいものです。
※特定非営利法人BOONでは、子どもたちがありのままで過ごせる居場所づくりもしています。
お問い合わせ先:居場所YURARA kitora@npo-boon.org
3.精神性が高まる青年後期(高校生)
中学生、高校生の時期の心模様は「思春期葛藤」とも呼ばれます。この時期を通して、子どもたちは「アイデンティティの確立」つまり、「自分らしさ」を追求していくわけですが、親からの期待、周囲から求められる役割、自分が本当にやりたいことなど、理想と現実の狭間で模索しながら、少しずつ自分を見出していきます。
高校生の時期は、保護者からの保護を離れ、社会へ参画し貢献し、自立した大人となるための最終的な移行期間ともいえます。
この時期に周りの大人の影響が強すぎると、自分の力で「自分らしさ」を追求する妨げとなります。
本人の持つ「良さ」や「強み」を生かしながら、自分の力で自立へと進んでいけるよう、少し遠くから見守りましょう。
精神性が高まるこの時期は、友人関係にも変化がみられます。
チャムグループからピアグループへ変化することで、友人関係が少しずつ安定感のある形になり、その結果、不安が減り、周囲を気にすることなく、自分が本当にやりたいことに目が向けられるようになるのです。
自立への階段を一歩ずつ昇る子どもの姿に、逞しさを覚えることも増えてくるでしょう。
会話やスキンシップが減る時期でもありますが、「いってらっしゃい」の流れでさりげなく背中を叩いてみるなど、「あなたのことを見守ってるよ」というサインを送ってみるのはいかがでしょうか。
※チャムグループ(中学生の頃)とは、「一緒」であることが友人関係において重要で、同じことで安心する関係のこと。ピアグループ(高校生の頃)になると、それぞれの所属や興味が違っていても、両者の間に信頼関係を土台にした友情が成立する。
乳児期から始まり、青年後期までの子どもの姿をお伝えしたシリーズ、いかがでしたか。
18歳で成人となるまで、子どもたちは心と身体の変化と向き合いながら、自分の持つ力を発揮しようと試行錯誤を繰り返しています。
大人はつい、子どもの幸せを願うあまり、なるべく効率よく、壁にぶつからずに育ってほしいと思ってしまいますが、試行錯誤を通しての成長の中で、多くの宝物を得て、子どもたちは大人になります。
その宝物こそが糧となり、悩んだ時、迷った時に乗り越える力となるのです。
自分らしく生きる幸せを感じながら自立できるよう、温かく見守っていきたいですね。