パパの育休の過ごし方

育休とは『育児休業制度』の略であり、男性も女性も子どもが1歳になるまで育児のために仕事を休むことができます。

しかし2020年度の男性の育休取得率は12.7%。そして取得期間は5日間未満が28.3%でした。女性の育休取得率は81.6%、取得期間は約1年間であることと比較すると、いかに男性の取得率が低いかがわかるでしょう。

そこで、男性が育休を取得しやすくなるよう、2021年6月に『育児・介護休業法』が改正され、今年4月から施行されます。

今回は具体的にどのように改正されるのか、そしてパパの育休を有意義なものとするためにはどのようにすればよいのかお伝えしたいと思います。

目次
1.育児・介護休業法の改正内容
(1)4月1日から施行される内容
(2)10月1日から施行される内容
①産後パパ育休(出生時育児休業)の創設
②育児休業の分割取得
2.産褥期の女性の特徴
3.パパが育休でできること

1.育児・介護休業法の改正内容

『育児・介護休業法』の中の育児休業に関する部分が大きく改正されます。

(1)4月1日から施行される内容

厚生労働省の調査によると、これまで男性が育休を取りづらかった理由として“業務の都合”や“職場の雰囲気”が挙げられており、6割以上の企業が従業員に対して育休を取得するよう働きかけを行っていなかったと言います。

「本当は育休を取りたかったけれど、上司に言い出しにくくて取れなかった」など、利用を希望していたにもかかわらず、利用できなかった男性は4割にも及ぶそうです。

そこで4月より『育休を取得しやすい雇用環境の整備の措置』が事業主に義務付けられることになりました。

事業主は『育休に関する研修』『相談窓口の設置』『取得事例の収集・提供』などいずれかの措置を実施しなければならなくなります。

また、従業員やその配偶者が妊娠・出産した場合には、育休に関する制度や育児休業給付について必ず説明し、個別に取得意向を確認することも義務付けられます。

『義務付け』とは『絶対にしなければならない』という意味です。もしも違反したら事業主は行政に報告しなければならず、『助言』『指導』『勧告』を受ける場合もあります。さらに勧告に従わなかったり、報告を怠った場合などには『罰則』を受けることになります。

(2)10月1日から施行される内容

職場の環境を整えた後、いよいよ10月から育休の内容がより柔軟に、取得しやすく変わります。

産後パパ育休(出生時育児休業)の創設

育休とは別に、赤ちゃんが生まれてから8週間以内に4週間まで取得できます。

また、分割して2回取得することも可能です。

 

出生後8週間とは、女性にとっての産休に当たります。本来女性の産休は出産後の体を回復するために養生が必要だからこそ設けられた休みです。しかし実際には女性が一人で育児をしながら家事も行っているケースが多く、しっかり養生することができない現状がありました。

これまでも『パパ休暇』という名称でありましたが、分割して2回休むことはできなかったため、出生時や退院時に付き添いで1回休んでしまうと、その後もう一度休みを取ることはできませんでした。

しかし『産後パパ育休』では、出生・退院時の他、さらに家事や育児を担うためにもう1回休むことができるようになります。

②育児休業の分割取得

出生後8週目~1歳になるまでの約1年間、夫婦ともに分割して2回まで取得

可能になります。

また、1歳以降も保育所に入所できない等の場合には、2歳まで延長・再取得が可能です。

これまでは1歳以降に延長する場合は開始日が1歳時点、あるいは1歳半時点と限定されていましたが、いつ開始してもよいことになりました。これにより、例えばパパが1歳~1歳3ヵ月まで取得し、ママが1歳3ヵ月~1歳6ヵ月まで取得するなど、夫婦が交代で取得できるようになります。

出生後8週間以内の『産後パパ育休』と8週~1歳までの『育休制度』を合わせると、男性は1年間に最大4回休みを取得することができるようになります。

また事業主は、短期間はもとより1ヵ月以上の長期の休業も取得できるように配慮することが求められることになりました。

今回の法改正により、男性も女性も育休を希望するすべての人が当たり前のように取得できる。そんな職場の雰囲気に変わることを心から期待しています。

2.産褥期の女性の特徴

パパが育休を取得しやすくなり、ママと赤ちゃんと共に過ごす時間が増えた場合、女性の産褥期(産後2ヶ月間)の特徴についてぜひ理解していただきたいと思います。

出産後、女性の体はすぐに妊娠前の状態に戻るわけではありません。

子宮が妊娠前の大きさに戻るには6~8週間かかります。

また、女性ホルモンの分泌量が激しく変化し、一気にバランスが崩れます。そのため、情緒が不安定になりやすく、理由もなく涙もろくなったり、気分が沈みやすくなったりします。

また、些細なことでイライラしたり、怒りっぽくなることもあります。

育休を取り、一生懸命育児や家事を頑張っているつもりなのに、妻から感謝されるどころか怒られてばかり。そんな毎日が続いたとしたら、パパもまた辛い気持ちや怒りたくなる時があるかもしれません。

「出産してから人が変わってしまったようだ」と嘆くパパの言葉を耳にすることがありますが、それはママの気質のせいではなく、『マタニティーブルーズ』というホルモンによる一過性の現象です。

『マタニティーブルーズ』は産後3~5日頃から現れやすいですが、産後1ヵ月くらい経ち、ホルモンバランスが戻ってくれば、ほとんどの場合自然に落ち着いてきます。

しかし、この時期に周囲の理解を得られず、ママ自身が無理をしてしまうと、不安定な状態が長く続いてしまったり、産後うつ病を発症してしまうこともあります。

情緒が不安定になりがちな『産後パパ育休』の期間は特に、ママの気持ちに寄り添うことが何よりも大切です。

3.パパが育休でできること

では、『気持ちに寄り添う』とは具体的にどうすればいいのでしょうか?

まず、ママの話をよく聴いてあげましょう。

話を聴いていると「こうした方がいいんじゃない?」とアドバイスをしたくなるかもしれませんが、アドバイスはかえってママの気持ちを追い詰めてしまう場合もあります。

「それは大変だったね」「それはつらいよね」「よく頑張ったね」と共感的に聴いてあげましょう。

「パパに受け止めてもらえた」とママが感じられると、産後の不安な気持ちが和らぎ、育児にも自信を持てるようになります。

また、できる限りママが眠れる時間を作ってあげましょう。

新生児期には夜間も2~3時間おきに授乳する必要があり、ママたちは慢性的な睡眠不足になりがちです。

「赤ちゃんがいたら、眠いのは当たり前」と頑張りすぎてしまうママも多いのですが、睡眠不足の日々が続くと、体だけでなく心も疲弊し、産後うつ病を引き起こす要因にもなると、秋田大学教授の清水徹男氏は述べています。

「『赤ちゃんは俺が寝かしつけるから、安心して寝てて』と言ってくれた言葉が何よりも嬉しかった」と言うママの声もよく聞きます。

パパも共に睡眠不足に陥らないように、日中はパパ、夜間はママが赤ちゃんを見守る。あるいは日中はママ、夜間はパパが見守る・・・など、夫婦で交代して育児を担当するのも一つの方法です。

授乳以外の時間はママにゆっくり休んでもらう。そのためには、パパが家事を積極的に担う必要があります。

育休が始まったらスムーズに家事を行えるよう、出産する前に家事分担について夫婦で話し合っておくことをお勧めします。

また、普段家事をあまり行っていない場合には、キッチンの使い方や片づけ方、掃除道具の使い方、洗濯物の干し方や畳み方など具体的な方法について聞いておくとよいでしょう。

業務の引継ぎが重要であるのと同様に、家事の引継ぎも大切です。

パパが家事や育児を行ったら、ママとしては多少やり方が違うなと感じたり、もっと上手にやってほしいと思ったとしても、大目に見ることも大事です。

「ありがとう」「助かったわ」「上手だね」など、パパのやる気が出る言葉をぜひかけてあげましょう。

産後の喜びも大変さも共に経験することで夫婦関係は深まり、10年後、20年後の夫婦関係にも良い影響を及ぼすと言われています。

職場では合理的に考え、行動することを求められることが多かったと思います。合理的に行動することに慣れてきた私たちにとって、自分の思い通りにいかないことの方が多い産後の生活は戸惑うことばかりかもしれません。

しかし、赤ちゃんが少しずつ成長していくように、パパもママも少しずつ親として成長し、ゆっくりと新しい家族の形を築いていってほしいと願っています。

参考・引用文献

「育児・介護休業法の改正について~男性の育児休業取得促進等~」(事業主向け)説明資料 厚生労働省

リーフレット「育児・介護休業法改正ポイントのご案内」 厚生労働省

『母性看護学』小松美穂子・坂間伊津美著 放送大学

『産後うつ病の効果的なスクリーニングおよび支援方法についての文献的検討』

木村聡子・本庄美香・中尾幹子 大阪信愛女学院短期大学紀要