こんぺいとう・リサーチ☆ 「子どもに育ってほしいスキル!先生達の声!」

子育てをしている中や保育の現場で、「成長した!」と子どもに感じる瞬間と出会うことは多いと思います。そのタイミングは、“ふとした時”・“いつも見ている中で”など様々な瞬間に感じているのではないでしょうか。

子どもが生まれたときから、成長していく中で「こうなってほしい」という大人の願いは、少なからず浮かんでくるものかと思います。

今回は前回からの続き、教育関係者のアンケート結果をご紹介します。

子育て中の保護者の方200名、教育関係者70名に「子どもに育ってほしいスキル」についてアンケート調査を行いました。子どもの側にいる大人たちが、どのような願いや想いを持っているのかお聞きした結果をご紹介いたします。

目次

1:子どもに育ってほしいスキルとは?
※この章は前回(http://kompeitou.com/column/research/)にご紹介した内容と重複します

2:先生達の願い1位☆自立心

3::自立とは!?

4:保育現場は、自立心の宝庫

5:ちょっとの大人の手助けと待つ姿勢が必要なエッセンス!

6:子どもの世界は、ワンダーランド

1:子どもに育ってほしいスキルとは?

保育の現場では、“子どもに育ってほしいスキル”として、「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」というものが大切にされています。

この10の姿は、①小学校との共有(小学校接続)、②お子様の成長を振り返る10個の視点として現場では活用がされています。「これが小学校入学までについていなくてはいけない!」という到達目標ではなく、「生活の中で大切にしてほしい子どもの姿」という多面的に子どもの成長を見ていく時のキーワードとして考えていくことが重要です。

表1:幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿

①   健康な心と体 健康な心と体を育てる力
②   自立心 自分で考え、工夫したり、やり遂げる力
③   協同性 他者と協力したり、分かち合う力
④   道徳性・規範意識の芽生え 物事の良し悪しがわかり、守ろうとする力
⑤   社会生活との関わり 家族や地域に興味関心を持ち、関わる力
⑥   思考力の芽生え 物事に興味を持ち、視察したり、予測したり、考える力
⑦   自然との関わり・生命尊重 身近な自然に興味を持ち、命の大切さや不思議さに感動する力
⑧   数量・図形、文字への関心・感覚 遊びを通し、図形や文字に興味関心を持ち表現する力
⑨   言葉による伝え合い 絵本や物語に親しみ、経験したことを自分の言葉で伝える力
⑩   豊かな感性と表現 さまざまな出来事に触れ、感じ、感動したり・表現する力

(神田奈保子リサーチ「子どもに育ってほしいスキル」;2019)

今回のアンケート調査では、子どもに育ってほしいスキルとしてこの10個の視点から「子どもに身につけてほしいスキルは何ですか?」という質問で上位3位までを選んでいただきました。

その結果、保護者617回答、教育関係者201回答が集まりました。

2:先生達の願い1位☆自立心

先生達のお子様に育ってほしいスキルの上位3位は・・・

1位☆自立心(23%)

2位☆健康な心と体(17%)

3位☆協同性 ☆思考力 ☆豊かな感性表現(11%)

(神田リサーチ「子どもに育ってほしいスキル」;2019)

保護者の方の1位は、「健康な心と体」でした。現場では、“家庭とは異なる場所だからこそ育てられるもの”が上位を占めていました。

今回使った“幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿”の「自立心」は、次のように説明をしています。

☆身近な環境に主体的に関わり、様々な活動を楽しむ中で、しなければならないことを自覚し、自分の力で行うために考えたり工夫したりしながら、諦めずにやり遂げることで達成感を味わい、自信を持って行動するようになる。

(『保育所保育指針』『幼稚園教育要領』引用)

自立心は、“問題解決力”“生きる力”などと言われる「非認知能力」を意味しています。言い換えると、「子どもが自分で興味関心を見つけ、満喫していく中で、多くの体験を通し、考えたり、工夫したり、粘り強く取り組む姿」と言えます。

まさに、教育現場だからこそ価値を感じられる姿ではないでしょうか。

3:自立とは!?

子どもに関わる現場にいると、「子どもには、自立した人間になってほしい」「小学校までには、自立心を身につけさせたい」など、保護者の方や先生方から自立の言葉をよくお聞きします。

では改めまして…「自立とはどう言う意味でしょうか?」

「自分で自分の事が出来ること」と答える方は多いかと思います。

間違いではありませんが、不足していることがあります。

自立とは…「出来る事と出来ない事を理解して、ヘルプが出せる事」を意味します。100点であったり、全て一人でなんでも出来る人間は、ほとんどいません。

大切なのは、“ヘルプ”が出せる力を持っているかどうか!

もし、“ヘルプ”が出せる力を持っていたとしたら、工夫する事や考えの幅も広がります。

この自立の考え方は、福祉・保育・心理学では前提となるものです。また、経営学などでも通じるものではないでしょうか。

私は、スウェーデンを訪れた際、この自立の考えを初めて知りました。

スウェーデンの作業療法士の方と話していた時に「奈保子、自立ってなんだと思う?」と質問されたことが始まりです。

私は、「自分のことが自分ででき、一人でも生活できることだと思います」と自信を持って答えたのを覚えています。

その返事に対し、「奈保子!それが自立なら、世の中には自立している人なんてほんの少ししかいないよ。大切なことは全部自分で出来ることではなく、“助けて”と言えるかどうか。誰かに助けてもらって、出来ればいいことも沢山ある。」と教えてくれました。

この経験は、貴重なものでした。帰国し、勉強を進めていく中でこの自立の考えは、福祉・保育・心理学どの分野にも共通するものだと知りました☆

教育現場に指導や支援にいく際、「自立している子に育てたい」という大人の声に対して、「出来る事と出来ない事を理解して、ヘルプが出せる事が自立です」と伝えることが多くあります。その度に、先生方や保護者の方は「そっか!一人で全てできなくてもいいんだ」とハッとした表情になることが多くあります。

自分で全てできなくても、ヘルプが出せる力を身につければ、子どもは生活を充実させることができます。また、ヘルプが出せる事で、出来る事が増え、興味や関心が広がり、非認知能力に結びつくことが想像できるのではないでしょうか。

 

4:保育現場は、自立心を育てる宝庫!

保育現場は、自立心を育てるのにとても適している環境です。

保育現場には、多くの人間、物、言葉、場所など様々な刺激に溢れています。

【人間】

友達(同い年の子、年下の子、年上の子)、保育者(様々な年齢や性格)など…

【物】

遊具、絵本、玩具、様々な紙(大きさ、材質、色)、様々な筆記用具(クレヨン、色鉛筆、絵具)など…

【言葉】

子ども同士のやり取り、大人とのやり取り、絵本から学ぶ日本語、会話から学ぶ日本語、大人同士の会話など…

【場所】

園庭、保育室、園内の場所(ホール、廊下、給食室など)、近くの公園、お散歩コースなど…

子どもにとって、“自分の好きなもの”を見つける事は、自立心の第一歩!

好きな先生でも、お友達でも、玩具でも、虫でも、秘密基地でも…子どもにとって1つでも“とっておき”を見つけるだけで、世界の見え方は変わります。

子どもの自立心を育てるためには、特別なプログラムも開発されていますが、遊び中心で生活している子ども達にとって“日常の時間を充実させること”が何よりも自立心を育てる機会だと言えます。

保育の現場は、考える機会も、工夫する機会も溢れていますまさに自立心を育てる環境には、ふさわしいといえるのではないでしょうか。

5:ちょっとの大人の手助けと待つ姿勢が必要なエッセンス!

保育現場は、自立心を育てるのに必要な経験がたくさん詰まっている宝庫ですが、「子どもだけで自由にさせておけば自立心は育つ」わけではありません。

ここで重要なのは、“大人の手助けと待つ姿勢”のバランスです。

発達は、自分自身の経験と環境によって成り立ちます。

せっかく子どもが良い体験をしても、周りの大人(環境)が反応しなかったら、その体験は色褪せてしまいます。逆もあります。どんなに素敵な人材・環境を用意しても、全部やってあげてしまったら(経験)、子どもの成長には結び付きません。

発達=自分自身の経験 × 環境(人的・物的)

 

大切なのは、バランスです。「子どもが困っている時や、きっかけづくりが必要な時には、そっと言葉がけを。それまでは、子どもの世界を信じてそっと耳を澄ませながら待っていて。」それを心がけるだけで、子どもの世界を壊さずに、子どもの成長をサポートすることができます。

6:子どもの世界は、ワンダーランド

ここまで、自立心について触れてきました。自立心を育てることは、特別で難しいことの様にも一見思われがちですが。

子どもの目線に合わせ、大人が想像力を身に付ければ、難しいことでも・特別なことでもなくなります。

子どもと接していると、「子どもの世界は不思議で満ちている」と感じることが多くあります。子どもの不思議な世界は、子どもの言葉や行動から感じることが多くあります。2つほど子どもの世界をご紹介します。

【A君:3歳児 魔法のペン】

A君は、茎のついている葉っぱを「これペンなの」と持ってきました。

「ペンなの?」と返すと、A「うん。ぼくね2つペン持っているんだよ。1つはね、茶色と緑と青と…たくさん色が出るの!」私「そうなんだ。もうひとつは?」A「もう1つはね、黒と赤だけ。普通のペン」私「その葉っぱのペンは?」A「これはね、色は出ないの。でも書けるんだよ」私「すごいね。魔法のペンみたいだね。」A「そうなの!魔法みたいなの!!」と言って去っていきました。

3歳児クラスの子どもの語彙力と発想力のすばらしさを感じる出来事でした。子どもの世界に合わせて会話をすることで、「この子にとってこの葉っぱは、どれだけ特別なのか」を理解することができ、彼の発想力や満足感を刺激することができます。

 

【Bちゃん:5歳児 薬屋さん】

 色々な葉っぱを集めてお医者さんごっこをするBちゃん。

蚊に刺されたという先生を花壇に座らせ、近くで葉っぱを切ったり、すり潰したり…B「はい。薬が出来上がりました」と言い、先生の膝に塗っている時に、先生「この薬は何ですか?」と聞くと、B「‥‥モンズ…」先生「え?モンズ??」

 

「モンズ」ってなに?と大人なら思ってしまいますよね。この後、皆さんならどのようなやり取りをしますか?

子どもの空想の世界は、新しい物を作り出すことができる素敵な世界。モンズをキーワードに「どんな薬なのか」「何に効くのか」「注意することは何か」など、子どもの世界に目線を合わせてみるだけで、このエピソードはグンと輝きを増します。そんな想像をするだけで、大人もワクワクしませんか?

この子どものワンダーランド(不思議な世界)を、どれくらい大人が楽しめるかが自立心を育てる秘訣かもしれませんね。

ぜひ、身近な世界をもう一度見つめてみてください。きっとそこにたくさんの可能性が広がっているはずです。

引用参考文献

・保育所保育指針解説書 2018 厚生労働省

・幼稚園教育要領解説書 2018 文部科学省

・保育所保育指針ハンドブック 2018 汐見稔幸 学研

アンケート調査手法

・Lancersのインターネットリサーチを利用。全国に住む子育て中の男女、教育関係者(乳幼児教育、塾、学校関係者)を対象に、有効回答を270人から得た。