子どもの発達のスピードは違うもの!

色々なお子さまと向き合う中で「ひとりひとり発達のスピードが違う」ことに毎回驚かされます。そのため、お子さまの姿を通して先生方や保護者にできるアドバイスも同じものはありません。

今回は、この“発達のスピード”の違いについてお話しをしていきたいと思います。

目次

1.ひとりひとりの発達のスピード
2.「うちの子は?」と思った時がチャンス
3.「ゆっくりでもいい」今の積み重ねがその子を育てる
4.さいごに

1.ひとりひとりの発達のスピード

発達の速度は、人それぞれです。発達のスピードが早い子もいれば、ゆっくりの子もいます。一般的には、発達が早い子の方が“優秀”のような印象がありますが、発達のスピードに関係なく各自“発達の課題”があります。

発達がゆっくりの子が特別劣っているわけではありません。誰にでも“得意なこと”と“苦手なこと”があるように、発達のスピードが早い子も“苦手なこと”があります。

つい人は特化している方に目が行きがちですが、少し見方を変えると、色々な姿が見えます。例えば、子どもは家で見せる姿と園や学校で見せる姿が異なることが多くあります。家庭でできていても園や学校ではできないこともありますし、逆の場合もあります。

私はよく「子どもを立体的に見るようにイメージしてみて下さい。ご家庭から見える子どもの姿は一面。園や学校から見える子どもの姿も一面。どれもその子で、どの見方も間違っていません。大切なのは、それを合わせて立体的に見ること」とお伝えします。

発達のスピードがそれぞれあるように、その子の色々な面を合わせることで、子どもの姿が立体的に見えると思います。

2.「うちの子は?」と思った時がチャンス

 多くの園や学校へ訪問させていただく中で気になることは、大人が持つ子どもに対する“園や学校での気になる感”と、“家庭での気になる感”に差があることです。

例えば、園・学校から“気になる子どもの行動”を伝えても、保護者から「うちの子は恥ずかしがりだから」「集団が苦手なだけ」「そういう性格なので」などの返答が返ってくることも多くあります。

園や学校は、子どもにとって“社会生活の場”です。園や学校には、“小集団”である家庭と比べ、子どもの周りにいる人数も、環境も、ルールも異なります。そのため、園や学校で困っていることが同じように家庭でも困っているとは限りません

また、大人から見て「困っていない」「大したことじゃない」と思っていても、当の子どもからすると「困っている」こともあります。

先ほどもお話ししたように、子どものありのままの発達を見ていくときに大切なことは“子どもを立体的にみていくこと”です。園や学校の子どもの優れているところ・課題となっているところ、家庭の中で優れているところ・課題となっているところ、子ども自身が自慢できること・不安や苦手なことなど、情報を色々と集めることがとても重要になります。

また、子どもが抱えている困っていることが多いのに「障がいじゃないから(障がいの診断を受けていない)大丈夫」と大人が判断をしてしまい、適切な関わりの機会が減ってしまうケースも少なくありません。

子どもが集団生活の中で生活していく時に重要なのは“どれくらい適応できているか”“どれくらい困っているか”という子ども視点に立って困り度を考えることです。

今、子どもにとって何が必要なのか“様々な角度からよく見て確認し”大人が支えていくことが重要になります。
「うちの子は?」とお子様の成長に対し少し立ち止まった時こそ、“子どもを立体的に見るチャンス”ではないでしょうか。

3.「ゆっくりでもいい」今の積み重ねがその子を育てる

 1日1日の積み重ねで、人の時間はできています。子どもにとっての1日は色々と体験してきた大人とは違います。子どもにとっての“体験”は、色々なこととの出会いになり、少しずつ成長していきます。

初めてのことは、できないことが多くあって当たり前です。また、今は困っていなくても子どもの将来のために”積み重ねの土台”を作っておいた方が“可能性”に繋がりやすくなります。

子どもに「ちょっと頑張る」「チャレンジしてみる」機会を多く渡すことは、“積み重ねの土台”を作るために大人ができる“未来への貯蓄”になります。

また、全てを完璧にできる必要はありません。もちろんパーフェクトにできることは、素晴らしいことです。しかし、初めからパーフェクトを求められてしまうと、子どもは息が切れてしまうこともあります。

パーフェクトを目指す前に重要になるのは“興味・関心”を持つこと。全てここから始まります。“興味・関心”を持って取り組むと、向上心が自然と生まれ「頑張ってみよう」「もっと~してみよう」と挑戦することを通して、スキルアップすることができます。

完璧でなくて良いのですか?」と保護者や先生方からの相談に対し「全てパーフェクトにできなくても良いですよ。お子様が興味・関心を持つことがとても重要になります。興味・関心を持てるように、私達大人ができることは“認めてあげること”だと思います。“今の頑張り”“努力しようとしている姿勢”褒めポイントは、たくさんありますよ」とお伝えします。

そしてもう1つ“興味・関心”を育てていくポイントは“様々な体験をすること”です。

子どもの体験は“興味・関心”を増やす絶好のチャンスです。

最近では「園でできないことが多くても良い。興味があることだけやらせてあげたい」という保護者の方と出会うことが増えました。お子様に対する温かい気持ちからくる言葉だと思いますが、集団活動が中心の園や学校からすると、とても難しいお願いになります。

では、どうすればいいか。「保護者に興味があることを増やすご提案をするのはどうですか」と園や学校にアドバイスをすることが多くあります。

興味を増やすことで、できることや手段を知る機会が増えていきます子どもが「これも好き。あれもやってみたい」と色々なことに興味・関心を持つことができると、集団生活が充実していきます。

これは“こだわり”が強いお子様にも同じ様に言えます。こだわるものを増やしていけば、色々なものと出会う機会がグンと増えるのではないでしょうか。

まずはチャレンジしてみないと、それがその子にとって興味があることなのか判断できないと思いませんか?“まずはやってみる。だめなら他の体験(方法)を探せばいい”そんな風に大人が考えてみることをお勧めします。

4.さいごに

 どの子も違うとわかっていても、自分のお子様のことだと保護者や先生方も割り切れない想いもあると思います。

でも、困ったときほど「人それぞれスピードがある。この子のスピードは?自分が思っているスピードで合っている?ついてきている?」と振り返ってみてください。

子どもと足並みを揃えることで、子どもと安定した二人三脚ができます。

子どもと一緒に進むことで、今まで気が付かなかった多くのことに気が付けるようになると思います。