子どもが「紙」に触れる経験をつくろう

ここ数年、保育現場の先生方からこんな声が聞かれるようになりました。

「自由制作の時間に、手が動かない(なにをしていいかわからない)子どもが増えた気がする」、「アプリを見ることが多いせいか、絵本の扱い方がわからない子が増え、すぐに絵本がボロボロになってしまう」などなど、、、

教育先進国のスウェーデンでは、2010年から積極的に教育現場にITを導入してきました。そんなスウェーデンが、「過剰なデジタル化が学力低下を招くとして、紙の教科書に回帰する」というニュースは、日本でも大きな話題となりました。

子どもにとっての直接体験の重要性については、以前もこのコラムでお伝えしましたが、(http://kompeitou.com/column/sympathize/)、今日は、そんな時代だからこそ「紙に触れて欲しい!」と設立した、カミスクの活動についてご紹介します。

目次

1. カミスクの活動のご紹介
2. 伝統文化に触れる子どもの視点
3. 紙sch.スタートに向けて

1.カミスクの活動のご紹介

日本には、「手」という言葉をつかった表現が多くあります。

「手加減」「手を抜く」「手ぬるい」「手さばき」「手触り」などなど、、、

ロボットにとって古くて新しい課題の1つが「つかむ技術」なのだそうです。

プログラミングされた作業を行うことは出来ても、ものに合わせて臨機応変に対応することは難しい、、、

人間の赤ちゃんが、手づかみ食べをしたり、様々なものに触れながら、ごく自然に「つかむ技術」を学んでいることとは、対照的ですね

カミスクは、紙の文化継承・拡大・発展、人材の育成を中心に、紙の生産者や紙漉き職人とつながりながら、子どもたちに向けた教育活動を積極的に行っています。

国内外で活躍する紙の造形作家の西村優子さんと共に、紙を通じたあそびやコミュニケーションを通して、子どもたちによりよい環境を提供しています。

2.伝統文化に触れる子どもの視点

カミスクでは、紙を面白く楽しく伝えていこうと、伝統芸能と、伝統産業・工芸を一緒に盛り上げることにも取り組んでいます。

そんな取り組みの1つ、紙すき寄席。

こちらの写真は、紙すき寄席atかぞくのアトリエ(渋谷区2024.11.30)での様子です。

落語は、笑福亭羽光さん。

こどもたちにも伝わるよう全力で取り組んでくださる姿、落語の迫力(身振りや声量など)は、きっと子どもたちの小さな体にもしっかりと響いていたのではないでしょうか。

紙切りは、はさみ屋紙太郎さん。

どんなリクエストにも、次々と応える巧みな芸に圧倒されました。

リクエストして作ってもらった作品がもらえるとあって、子供たちは必死です。「はい、はい。はーい!」と、大盛り上がりとなりました。

今回の寄席では、赤ちゃんの姿も多くみられました。お母さんやお父さんたちが心の底から笑っている姿をじっと覗き込んでいるのが印象的でした。

親子が一緒に同じ空気を体験するという行為自体が、何よりも尊いことに気づかされます。

新春には、新春紙すき寄席を行いました

この日の落語は、古今亭今いちさん。

落語が中心のこの日は、お客様の大半が大人の方でしたが、お父さんと一緒に来てくれた5歳の女の子の視点がとても面白く、「この時期の子どもだからこそ感じられる楽しみ方」があるのだと、再認識しました。

その時のお話はこちらのnoteにまとめましたので、ぜひ女の子の視点を実感してみてください。

新春紙すき寄席—「子ども」の視点から https://note.com/kamisuku/n/ncd8655d6e7d4

3.紙sch.スタートに向けて

今後はこうした場づくりを教育者向けに広げていきたいと考えています。

子どもにとっての環境は、かかわる大人に大きく左右されます。

紙sch.では、「紙(和紙)」を真ん中に、保育者や学校の先生が前向きに学び、子どもたちと一緒に笑顔で学ぶための種(ヒント)を持ち帰れるような、そんな学びを提供する予定です。

美しい造形のレシピや、生産者や紙漉き職人の皆さんとの対話など、充実した内容を企画していますので、「紙好く人」はぜひお仲間に、、、