子どもにとっての良い玩具とは~遊び込む子どもの姿と玩具の役割

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保護者向けの講演会やセミナーに伺うと、「良い玩具を与えたいのですが、何を買っていいかわからないのです。」というご相談を受けます

世間を見渡せば、「知育に最適」「この玩具で遊ぶと○○が出来るようになる」というような、「子どものための玩具」が溢れています。

これらの玩具すべてを否定するものではありませんが、「何をもって『子どものため』と謳っているのかな?」と、首をかしげてしまう玩具も存在しています。

子どもの発達理解がある専門職であれば、「良し悪し」を判断する基準を持っていますが、初めての子育てに奮闘するお父さん、お母さんは判断に迷われることでしょう。

近年は、知育のみならず、木育やSDGsなど、様々な視点が含まれた玩具もあり、購入者をさらに迷わせています

そこで今回は、「子どもと玩具」について、お話しようと思います。

目次

1. 玩具は偉大~玩具選びのポイント
2. 玩具を通した環境づくり~木製玩具サンカクツムキ?が出来るまで
3. 見守る大人とのかかわりが育むもの

1.玩具は偉大~玩具選びのポイント

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子どもにとって、玩具の存在は偉大です。

「子どもの遊びと玩具研究会」が翻訳した『良い玩具のAからZ=遊びと玩具の小事典』には、玩具について、遊んでいる子供がいて、はじめて玩具に意味が与えられ、役割が与えられ、そして活きたものになります。どのような活かされ方が表に出てくるかは、玩具より、私たち個人や社会のあり方によっても違ってきます。子供たちは私たちを模範とし、遊びにおいても私たちの間違いを教えてくれます。私たちがどのような模範を与えているかを知るためには、私たちもよくみきわめねばなりません。」と書かれています(Spiel gut,1980=1980)。

この解釈は様々あると思うのですが、私はきっと、「子どもを観察しながら、子どもの発達や興味に合わせ、子ども自身や社会の環境を活かして玩具選びをしよう」ということなのだろうと理解しています。

玩具を選ぶときのポイントをいくつか挙げてみましょう。

・年齢や発育段階に合っていること

・子どもの想像力を刺激するもの

・子どもの周囲の世界を体験できるもの

・多様な遊び方ができるもの

・耐久性や安全性、環境への配慮がなされているもの

このような条件を基本として選ぶと、間違いがない玩具選びが出来るはずです。

良質でシンプルな玩具は、遊びと経験を豊かにします。

例えば、積み木の楽しさはどこにあるのかと考えた時、「正解がないこと」「失敗しても積み直せばいいこと」「自分次第でいろいろな楽しみ方ができること」があげられます。

ついつい、刺激の強い玩具を与えてしまいそうになる時は、「その玩具でくり返し遊ぶことで、子どもの発達にどんな影響を与えるか」といった視点も持つといいですね。

また、子どもは何かの役に立つため(例えば「頭がよくなるため」など)に遊ぶのではありません。遊びそのものに惹かれ、楽しいから遊び込むのです。

「クリアをしたら終わり」ではない、何度も遊びたくなるような玩具は、よりよい玩具といえます。

2.玩具を通した環境づくり~木製玩具サンカクツムキ?とMIERUが出来るまで

子どもにとっての環境は、人的環境(人)・物的環境(玩具や遊具など)・自然的環境があります。これらの環境から、人は大きな影響を受けます。

子どもが伸び伸びと自己発揮できるよう環境を整えることは、発達をさらに促すことになるのです。

玩具を通した環境づくりの一環として、「木製玩具サンカクツムキ?」をご紹介します。

この玩具は、「多様性」をテーマに、子どもたちへ既存の積み木にはない新しい価値をもつ積み木をという想いで、私自身が制作に関わり、監修しました。

木育や玩具に魅せられて20年余り、おもちゃに関する知識や講義経験等を活かし、保育園やワークショップでの実証を重ねながら、就労継続支援B型事業所の皆さんと協働する形で商品化しました。

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また、「想像力」とSDGsの視点を大切にしたMIERUシリーズ(乗り物・食べ物)には、遊びが広がるバッグを付け、韻を楽しむ詩をつけるなど、遊びのヒントを添えました。

遊びや収納用として活用するだけでなく、お母さんやお父さんが子どもとの思い出が詰まったエコバッグとして使用する姿をイメージしてつくりました。

活用方法に自由があり、あそびを狭めず、人と人がつながる環境が生まれる玩具。

玩具の世界は奥深いなあ」と感じて頂けたら幸いです。

木製玩具 サンカクツムキ?

積み木の世界では、「サンカク」はあまり活躍が出来ませんでした

同じ形が積みやすい、基尺(基本となる一片の長さ)が大切

だから「シカク」がかっこいい

・・・本当にそうでしょうか?

「人間も一人ひとり違うのだから、いろんな形やサイズの積み木で

遊ぶことで子どもたちの豊かな感性はもっと広がるはず!」

ちょっぴりとんがっているから、扱いにくいかもしれません

でも、三角は本来とても美しい形

キョウイクデザイン®︎監修の『サンカクツムキ?』は

就労継続支援B型事業所の皆さんの丁寧な手作業で、角を少しだけ

「まあるく」してあります

一つひとつ、形も大きさも違う個性豊かな「サンカクたち」

子どもたちがたくさんの遊び方を発見してくれますように 

MIERUシリーズ

キョウイクデザイン®︎が監修したMIERUは、

子どもへの深い理解と美しいデザインを大切にした

温かな循環を育む玩具です。

家具製作の過程などで生まれる材木の端材を

就労継続支援B型事業所の皆さんが時間を掛けて

世界に1つの積み木に仕上げました。

「今あるもの」を大切にすること

「ワクワクする気持ち」を大切にすること

「人とのつながり」を大切にすること

この積み木が、未来をつくる子どもたちの

豊かな感性に届くことを祈って。

3.見守る大人とのかかわりが育むもの

玩具には、身体性の発達、社会性の発達、知的な発達や感性の発達など、さまざまな発達を促す力があります

しかし、一番大切なことは、「玩具で遊ぶことで生まれる教育的効果は、結果であって目的ではない」ということです。

大人が過度に教育的な効果を期待することで、玩具の持つ本来の豊かさは失われてしまいます。

遊びに入り込む子どもの姿は、私たち大人にたくさんの気づきを与えてくれます。

楽しみながら遊ぶ子どもたちは、その豊かな感性で様々なことを感じます。

その想いに寄り添い、共に遊んでくれる大人を必要としています。

玩具は与えるものではなく、子どもと共に楽しみ、子ども理解を深めることができる素晴らしいツールです。

ポイントをおさえながら、お子さんとの玩具選びを楽しんでくださいね。

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参考文献:

Spiel gut Arbeitsausschuss Kinderspiel + Spielzeu (1980) Gutes Spielzeug von A bis B