保育士さんや幼稚園の先生は、“笑顔”“子ども好き”“困ったときは、頼れる先生”そんな印象があるお仕事です。
しかし、近年・・・
☆保育時間が11時間を超える0歳児が1割強保育の時間が増えている
☆様々な家庭に対応する、保護者支援の難しさ(子どもだけを見ているわけではないんです。)
☆待機児童問題に行政が追われ、現場で働く先生方に負荷が生じている現状
☆人員不足・低賃金の中での重労働
☆先生同士の派閥(現代版大奥化している園もあるといわれるほど…)
☆先生自身の子育てと仕事の両立の難しさ
☆男性保育者の従事の低さ
☆精神的なストレスを感じている人が 「常に感じている 49%」「かなりの頻度で感じている 30%」。
☆その中で「“うつ”と診断されたことがある人 27%」「診断されたことはないが、自分はうつ状態になると思うと自覚している人 24%」
現場では、ゆとりを持った保育を展開することは、とても容易ではないのが今の保育の現状です・・
「仕事は、大変だけどやりがいがあるから」「子どもがいるから頑張れる!」そんな声をよく保育の現場では耳にします。
でも!!心と体の疲労は、“やりがい”や“子どもへの愛情”とは別物!!!!!
もう一度改めて、自分たちの心と体の声に耳を傾けてみませんか??
1:心が健康でないと“いい保育”はできません
2:保育者に求められるカウンセリングマインド
3:自分と上手に付き合う4つの方法
4:さいごに
1:心が健康でないと“いい保育”はできません
「“いい保育”ってどんな保育を想像しますか?」子どもとゆっくり向き合える環境、笑顔にあふれる保育現場、信頼し・信頼されている関係、計画をきちんと立て臨機応変に対応できる保育・・・人それぞれ理想とするものが違うので、理想を上げたらきりがありませんね。
さて、そんな自分が思う“いい保育”とどれくらい距離がありますか?
実際の保育現場は、保護者からの期待や、国からの期待、責任感など…「身動きが取れない!」そんないっぱいいっぱいで、心も体も疲労困憊の先生も多いと思います。
疲れるのは当たり前のこと!人間は、疲れます!!そんなに心も体も使って、疲労を感じない方がおかしいのかもしれません。(麻痺しているのかもしれませんね…)。
そんな状態では、“いい保育”は、できませんよね。子どもの発達成長を支える役割の現場の先生たちがその状態では、“保育の質は下がる”のも当たり前です。
以前、ある園長先生とお話をしていた時に「好きで保育の質を下げようとしている保育現場なんてないですよ」とこぼされたのをよく思い出します。「子どもが好き!」「保育の現場に出たい!」そんな夢をもって進んで来た人が、好きで保育の質を下げようとしているわけではない。人員、重労働、低賃金、専門性の向上の時間も取れない、人間関係の難しさ…そんな現実が、分厚い壁になっていることを改めて考えさせられます。
「自分に自信がない」「息抜きができない」「煮詰まってしまう」「誰に頼っていいのかわからない」「弱音がはけない」等そんな小さな悩みは、溜まっていくとストレスを育てていきます。
例えば、カウンセリングルームは、弱いから失格だから相談しに来る場所ではありません。“今よりもっと自分を成長させるため”に相談に来る場所です。
誰かに少し話すだけでも、すっきりすることがありますよ。周りを頼ってみる、そんな方法をお勧めします。
2:保育士に求められるカウンセリングマインド
保育は、子どもの支援と保護者の支援の両方が求められる現場です。そのため、先生方のカウンセリングマインドの育成は、必要不可欠なもの。保育者向けのセミナーなどを検索してみると「保育者のカウンセリングマインド」というものが多く検索に引っ掛かります。
不思議なのは、保育者へのカウンセリングやケアについては、なかなか検索に出てこないということです。「保育者のケアは、誰がやるの?」という素朴な疑問があります。仕事のためにカウンセリングマインドを育てていくことは、重要なことです。でも、皆さんたちへは、いったい誰がケアしてくれるのでしょうか?家族?友人?同僚?信頼できる人の優しさに少し触れるだけでも、癒されることは多くあると思います。保育職は、ストレスが高い仕事の1つです。自分だけでなく、たまには周りに弱音が吐けたり、ストレス発散できる関係があると良いと思います。
3:自分と上手に付き合う4つの方法
自分と上手人付き合うためには、まず “自分を大切にする”という考えを持ってください。
過保護にしろと言っているのでも、わがままになれと言っているわけでもありません。“自分を大切にする”というのは、“自分の気持ちをきちんと聞く・自分と会話をする”ということです。そして、時には甘えさせてあげたり、励ましたりすることだと思います。
これは、相手が、自分以外の子どもであったとしても大人であったとしても同じで、まずは“自分をきちんと持つ”これが基本とし、次のポイントをお伝えします。
・自分の時間をきちんと持つ (仕事とプライベートの区別をつける努力を)
・自分だけの“とっておき”を増やす(好きなことをたくさん増やしてみてください。逃げ場をたくさん作ることにもなりますし、選択肢を増やすことで志向も柔軟になります。)
・ストレストレーニングをする(「もし~が起こったら」というシミュレーションをしておくと、いざというときに助けになります。ストレス耐性の強化)
・頭の中を整理する(書き出すことや、自分に問いかけるなどアウトプットを一度すると客観視できます。)
4:さいごに
いかがでしたでしょうか?保育の現場や介護職・看護職では、「人のために」「人の役に立つことを」という思いが強い方が多いと思います。でも忘れないでください!“自己犠牲は、美徳ではありません”そして、“自分が健康でないと他人を支えることはできません”。辛いときは、辛いと言える勇気を。その勇気を受け止める場所は、皆さんの側にあること忘れないでください。
皆さんが好きな子どもたちとの時間が、笑顔に溢れ「今日も充実した」と心の底から思える…そんな現場が一つでも増えることを願って。
(参考資料)
赤田太郎 2010 保育士ストレス評定尺度作成と信頼性・妥当性の検討 心理学研究
加藤由美・安藤美華代 2015 保育者のメンタルヘルスに関する国内外の研究や動向の展望 岡山大学教育科教育集録
神谷哲司・杉山隆一・戸田有一・村山祐一 2010 保育園における雇用環境と保育者のストレス反応 日本労働研究雑誌
木村直子・赤川陽子 2016 保育士のストレス要因に関する研究 鳴門教育大学研究紀要
諏訪きぬ 2007 保育の長時間化と保育の課題 ミネルヴァ書房 他…