子どもと向き合っていると、いつの間にか「褒めることができても、叱ることができない」「叱ってばかりいて、褒めることができない」など、子どもとの向き合い方が難しいと感じることはありませんか?
今回は、褒めることと叱ることのバランスについてまとめました。
特に、信頼できる大人・大好きな大人に「叱られる」ことは、子どもにとって影響が大きいため、ぜひ先生方や保護者皆様に知っていただきたいと思います。
1.叱られ慣れていない子どもと、叱り慣れていない大人
2.叱ることの大切さ
3.褒めると叱るのバランス
4.さいごに
1.叱られ慣れていない子どもと、叱り慣れていない大人
現場指導に行くと「子どもが自分の感情をコントロールができない」という悩みをよく聞きます。
他にも「癇癪を一度起こすと収まるまで時間がかかる」「気持ちの切り替えがなかなかできない」「一度機嫌を崩すと立ち直れない」などが挙げられます。
感情のコントロールは、子どもの性格や特性などが関係しています。
しかしそれだけではなく、育ってきた“環境”“経験”も大きな影響を与えます。
子どもの様子を観察していると“叱られる経験が少ない子”が多いことに気付きます。
“叱られる”経験が少ないと、叱られる=嫌な経験になり、子ども自身が叱られた時の表現や心の整理のつけ方を“学習する”ところまで辿り着けないままになってしまいます。
そのため、叱られると「どのように自分の不快を表現していいのか」わからず、なかには動揺してしまう子どもも出てきます。
つまり“癇癪”“切り替えができない”“パニックになる”というのは、子どもにとっての表現の1つであり必ずしも「問題行動を起こそう」としている訳ではないのです。
また、大人の行動が「子どもの機嫌を伺う」「子どもが癇癪を起こさないようにする」など、子どもの気持ちを“いかに安定させるか”に注意がいきやすくなっているように感じます。
その背景には…
①癇癪の対応(自信のなさや不安)
泣かれるのが怖く、つい子どもの言うことを聞いてしまう。
②褒めてばかりいて、叱り方が分からない
子どもが感情的になるような場面を作らないように、穏便に生活できる環境を作る。
そのためにも、褒めることはしても叱らないなどが挙げられるのではないでしょうか。
2.叱ることの大切さ
叱られることは、その時は“嫌な気持ち”になるため、ネガティブな感情を引き起こしやすいですが、“育つもの”も多くあります。
☆物事の基準が分かる
叱られることで“何が良くて、何がダメなのか”を知ることができます。
子どもの気持ちを受け止めることは、子どもと向き合う際とても重要になります。しかし、子どもの思いに大人が全て従ったり、良しとすれば“良し悪し”の区別がつかなくなります。
「それは違う」と伝えることは、子どもにとって物事の理解をグンと深めることに繋がります。
☆教えることが重要
叱る時には「それは違う」と伝えるだけでなく「こうするといいよ」「こうするんだよ」と正しいことを教えることが重要です。
よく子どもに「こういう時どうするの?」と考えさせる大人がいます。実はこの問いかけは、子どもにとって難しい作業になります。
考えて答えることができるようになるには、ある程度“知識”があり“理解”ができるようになってからだからです。
まず、子どもに考えさせる前に“正しいこと”を教え、できたら褒めるということを心がけてみてください。
失敗体験が成功体験に変わるチャンスにもなります。
また、叱る時に注意することは“叱ると怒るは違う”ということを意識することです。
「怒る」ことは、感情が中心にきます。「叱る」というのは、理性が伴うものになります。
担当する脳も「怒る」は“五感の脳”と言われる右脳、「叱る」は“論理の脳”と言われる左脳となり、生理的にも異なります。
そのため、相手に対し怒りをぶつけたり、気持ちを発散させたりすることは「叱る」とは言いません。
「叱る」というのは、なぜダメなのか?どうしたらいいか?など論理的な視点から伝えていく作業になります。
子どもに「怒る」のではなく「叱る」ことを通して、多くのことを伝えてみることをお勧めします。
3.褒めると叱るのバランス
“叱る”ことの大切さについてお話をしてきましたが、叱られ続けると子どもの自己肯定感や自信は低くなってしまいますし、大人も子どもの良いところが見えにくくなってしまいます。
また、これは叱られ慣れても同じ状態になります。
そこで、叱る時に重要になるのが“褒め行動”とのバランスになります。
「叱ると褒めるバランスは、1:2(叱る:褒める)を意識してください」これは、私が先生方や保護者に“叱る”ことについてお伝えしていることです。
「今日1回叱ったら、2回褒める」と考えてみてください。子どもの褒めるポイントはたくさんあります。
☆頑張ったこと、努力したこと
☆結果が伴ったこと
☆夢中になったこと
☆成長したこと
☆絶好調だったこと
☆完璧にできなくても、途中まで粘れたこと など
褒めるポイントは“何でも褒めるのはダメ!完璧でなくていい!”です。
叱り上手と同時に、褒め上手になりましょう。
叱る時や褒める時に共通している大切なことは“相手に伝わるように伝えること”です。
叱るという行動は自分の感情を出すのとは異なり、必ず相手がいます。
その相手に対し「自分の伝えたいように伝える」のではなく、相手視点に立ち「相手に伝わるように伝える」ことが重要になります。
現場には「中途半端に叱ることや褒めることをするのはやめましょう。子どもが理解できません。子どもに分かりやすい声・表情・トーン・リズムで違いをつけながら伝えてください」とお伝えします。
例えば“笑いながら叱る”“目が笑っていない状態で褒める”など、行動がチグハグになってしまうと、相手に上手く伝わりません。
褒める時は、笑顔で心の底から伝え、叱る時は、気持ちを落ち着かせて淡々と伝えていくなどの工夫が重要になります。
4.さいごに
子どもは、様々な経験をして成長していきます。その時、出会う人、言葉、対応など多くのものを吸収し、影響を受け学んでいきます。
叱られる経験も褒められる経験と同じくらい、子どもにとってとても価値のある時間だと考えてみてください。
“褒めると叱るをメリハリ持って行う”“怒るのではなく叱ること”ができるようになると、子どもの可能性だけでなく先生方や保護者の方の自信も育っていくと思います。