少し前に、「赤ちゃんもスマートフォンが使える!?」という驚きの動画がYouTubeで騒がれました。
動画では、子どもが雑誌を開いているのですが、雑誌のページのめくり方がわからず、まるでパネルをタッチしページを変えるようなしぐさをします。
この動画だけでなく、皆さんの周りにも子どもが当たり前のようにデジタル機器を使う姿を見て驚く事があるのではないでしょうか。
大人は、そんな姿をみると「すごい」とついつい喜んでしまいがちですが、気になる事が2つあります。1つ目は、「赤ちゃんでも、使いこなすことができるような仕組みになっていること」。デジタル機器は、赤ちゃんでも出来るくらい簡易化されて作られています。“開発力”の素晴らしさを感じます。2つ目は、「低年齢から、デジタル機器が身近にある環境」。大人の私達が育ってきた環境と、今の子ども達の育っている環境は、大きく異なります。子ども達は、大人になってからスマートフォン等を初めて手にする環境でなく、幼い頃から常に側にある環境です。そのため、成長に与える影響も考えなくてはいけません。子どもがデジタル機器を使う事は、大人の私達がデジタル機器を使う感覚と同じではいけないのではないでしょうか。
今、子どもにとってデジタル機器が身近にあるのは当たり前の時代になりました。
そんな子ども達は、「デジタルネイティブ」と言われています。
今回は、そんなデジタルネイティブの子どもと家庭について、まとめてみました。
1:2歳未満の子どもには、動画を見せないよう勧告!
2: 子育ては、デジタル器具に任せてはいけない!
1:2歳児未満の子どもには、動画を見せないよう勧告!
目次を読んで驚かれた方も多い思います。中には、「え!普通に見せてしまっている」と焦った方もいたかもしれません。日本は、デジタル機器について米国やヨーロッパの国に比べると鈍感と言われています。
米国小児学会(APP)は、「ゲームやネットは、子どもの発達に影響を与える」(2011)という報告を上げ、2歳児未満の動画などを見せないように警告しています。特に、集中力・問題解決力・睡眠の低下などが懸念されています。
集中力・問題解決力・睡眠の低下は、どれも生活の質に関係するものになります。
人間にとって乳児期は、愛情を感じながら生活習慣を身に付ける事や多くの人・物・事柄との出会いの中で“人間らしさ”を獲得していく重要な時期になります。幼児は、乳児期で身に付けた力を使いながら、考える事や共有しあう事を通し、より“生活の質を整える”貴重な時期になります。脳の発達は、乳幼児期に大きく前進します。
脳の発達にとって重要な時期に集中力・問題解決力・睡眠が低下するという事は、勿体ない事です。
☆集中力・問題解決力・睡眠が低下すると・・・・
①集中力低下で考えられる姿
・そわそわしている(落ち着かない) ・動き回る(多動) ・気持ちが色々な物に向く
・一つの事をやりきる事が難しい ・人の話が最後まで聞けない etc…
②問題解決力低下で考えられる姿
・工夫することが苦手 ・考える事が苦手 ・答えを知ることに執着しやすいが、自分から動けない ・協力など出来ない etc…
③睡眠低下で考えられる姿
・感情のコントロールが難しい ・生活習慣の定着に時間がかかる ・何度言っても理解するのに時間がかかる ・体力がない ・無気力状態になりやすい ・ボーっとしている時間が多い ・急にキレる etc…
また、2歳までの話ではなく、13~18歳までも1日30分以内の使用が推進されています。
2:子育ては、デジタル器具に任せてはいけない!
今は、DVDやスマートフォン、タブレットのアプリ・動画、デジタル知育グッズを使って子育てをされている環境も珍しくありません。しかし残念ながら、子どもにとって言語や認知能力を獲得していく時にデジタル関係を渡すことは、効果がほとんどないとも言われています。
では、何が子どもの言語能力や認知能力を高めると思いますか?
デジタル器具を渡すより最適な方法は、子どもの心身の発達を考えると“他の人との交流”が挙げられます。子どもは、お母さん・お父さん・友達・大好きな大人等、様々人と向き合う事で、多くの言葉に触れ・考え・楽しさを知り学んでいきます。
デジタル器具の多くは、画面からの一方的な言語の発信になりますが、リアルなコミュニケーションは、そこに双方からの発信=やり取りが生まれます。
例えば、ご家庭で、スマートフォンや動画・DVDを1時間見させるよりも、お父さん・お母さんと5分・10分話しをする方が、子どもにとって温かく・知的で・受け止めてもらえる時間になるのは想像できるのではないでしょうか。
デジタル器具は、万能です。
検索すれば多くの知識がもらえますし、大人も子どもの興味をひくものが沢山あります。デジタル器具を使わないことは、難しいのも現実だと思います。しかし、デジタル器具に出来ない事があります。それは、“子育て”です。
心理の実験で有名なハーロウの「アカゲザル」の実験があります。この実験を通して子育てや人との関係において「スキンシップの重要性」が言われます。
☆ハーロウの実験☆
生まれたばかりのアカゲザルの赤ちゃんに2体の代理母を用意します。
1つの代理母は、針金で出来ていて哺乳瓶が付いています。
もう1つの代理母は、毛足の長い柔らかい布で針金を包んでいますが、哺乳瓶はついていません。
ハーロウは、この2体の代理母を部屋の中に準備し、アカゲザルの赤ちゃんが「どちらの母親を好むか」の観察を行いました。
その結果、お腹が空くと針金の母親の方に行きますが、それ以外は布の母親の近くにおり、成長していくと、更に布の母親の側にいる時間が長くなりました。
また、ハーロウの実験以外にも子どもが育っていく中では、大人からのスキンシップや温かい関りが重要であるという研究は、多くあります。
子育てでデジタル器具を使わないという選択が難しいのであれば、「デジタル器具に子育てを代わりにさせるのではなく、デジタル器具を上手に使う方法を考えてみる」のはいかがでしょうか。
例えば、長距離移動の時など“特別な時”に使う事、普段子どもの前ではなるべく使わないなど色々な事が考えられます。ポイントは、“特別な時を増やさない事”です。
保護者の方から、「動画を見ないと静かにならないです。レストランとかいろいろな場所で見せておくと静かになるのでついつい・・・」と言う相談なども多く聞きます。
子どもが静かになるのは、動画だけでしょうか?
子どもは、動画以外にも絵本・おりがみ・お絵描き・ブロックなど様々なものに夢中になれる“好奇心”があります。
“スマートフォンやタブレットを渡すと静かになるが、取ると暴れる”状態は、依存状態に近いと言えます。ある意味、危険な状態で、放っておいてもなかなか改善はしません。アルコール・薬物など依存状態になると治療が必要なように、子どもの“デジタル依存”に対してもきちんと大人が意識して環境を整える事が必要になります。
☆子どものデジタル依存状態への対応☆ポイント
①勇気を出して、スマートフォンやタブレットを「おしまい」と言って取り上げる!
子どもは、「見たい」「もっと」と要求してくると思います。中には暴れたり、大きな声を出す子もいると思います。
でも、ここは「ダメのものはダメ」「暴れても渡せない」と粘ってみましょう。
※最初は、大変だと思いますが、何回か繰り返していくと、子どもが「無理だ」と学習すると行動は減ってきます。
②大人から進んで、デジタル機器以外のおもちゃを好きになる!
絵本やぬいぐるみ・ブロック・ボードゲームなどを生活の中で取り入れてみてください。
デジタル器具に親しみがある子は、動画など多くの刺激があるものに慣れているため、はじめは物足りなさを訴えてくるかもしれません。
子どものモデルになる身近な大人が、薦める事は子どもにとって影響があります。
ただ与えるだけでなく、ぜひ「これ面白いよ」「一緒に読もうよ」など子どもの興味関心を刺激する言葉がけなどの“きっかけづくり”をしてみてください。
デジタル器具は、子どもを黙らせる玩具(シャラップトイ)などとも海外では言われています。
デジタル器具であっても、玩具などであったとしても上記で述べたように「与えるだけ」では、他力子育てになってしまいます。
「与える」時に、子どもにとって社会の懸け橋となる大人が「どう子どもと関わるか」がポイントになる事をどうぞ忘れないでください。
デジタル時代、デジタルには出来ない事がある事もあり、子どもは求めているのも事実です。
次回は・・・
「デジタルネイティブ!?子どもの発達をデジタル器具は、邪魔をする!part2」
・子どもに与える影響
・デジタルネイティブ時代の家庭へのヒント
をテーマにより深く見ていきたいと思います。
【引用・参考書籍/動画】
WIRD NEWS 2011 To Protect Baby’s Brain, Turn Off TV https://www.wired.com/2011/10/infant-tv-guidelines/
Mary Aiken,PhD 2018 A Pioneering Cyberpshychologist Explains How Human Behaviour Changes online 子どもがネットに壊される ダイヤモンド社
UserExperiencesWorks 2011 A Magazine Is an iPad That Does Not Work.m4v https://youtu.be/aXV-yaFmQNk (動画)