誰も教えてくれない人間関係の処世術~後編~

こんにちは。対人関係療法を専門にカウンセリングをおこなっている、島崎です。

誰も教えてくれない人間関係の処世術~前編~では、周りにいる人間関係の整理の方法をお伝えしました。

皆さん、重要な他者が誰か分かりましたか?

重要な他者が思い浮かばなかったという方もいらっしゃるかもしれません。そのような方は、次回のコラムで詳しくお話したいと思います。

今回は、重要な他者は誰か分かったけど、どうやって関わればいいのか分からない方へ

コミュニケーションが上手になるポイントを4つに絞ってお伝えします。

目次

コミュニケーションで大切な4つのポイント

1. 具体的に「言葉」で伝える

2. 勝手に納得しない

3. 思い込みを捨てる

4. 直接言いづらいときは別の手段を考える

具体的に「言葉」で伝える

 

私たちは、言葉を使うことができる生き物です。それなのに、言葉を使わず静かにしていたほうが、コミュニケーションが円満にすすむというのは、なんだかもったいない気がします。もちろん、良い関係の時は全てを伝えなくとも、「誤差範囲(*もし、お互いの気持ちや期待が異なったとしても許容できる範囲)」の中でお互いの気持ちが分かり合えているような気もします。しかし、状況が悪い時や大切な話をしたい時は、言葉を用いて解決しなければ「誤差範囲」から大きいなズレにつながってしまいます。だからと言って、心のうちを全て伝えたほうが良いと言っているわけではありません。大切なことは、具体的に“してほしいこと”を伝えることです。

例えば、夫に会社の愚痴を言った時に、「ただ話を聞いてほしかった」だけなのに、夫から、「アドバイスを言われる」と、「喧嘩になったり、話す気がなくなったり」するときはありませんか?

これは、「ただ話を聞いてほしい=期待」と「アドバイスをされる=実際起きたこと」の間に“期待のズレ”が起きていることが要因となり、「喧嘩や話す気がなくなる=結果)」が起きたのです。

では、どのように伝えると期待のズレが起こりにくくなるのでしょうか?

ここでのポイントはどうしてほしいかを「言葉」で伝えることです。

今回の場合では、「会社の話を聞いてほしいから、何も言わず最後まで聞いてもらっていい?」「アドバイスはいらないから、最後まで愚痴を聞いて」と予め言葉で伝えることで相手の反応が変わるかもしれません。

 

勝手に納得しない

 

私たちは、ある程度コミュニケーションをとると、「この人はこういう人だ」「言っても変わらない人だ」と無意識の中でタイプ分けすることがあります。もちろんそれも、生きていく中で必要な方法かもしれません。しかし、そのタイプ分けが正しいかどうかは、本人に直接確認しないと分からないことも多いのです。

例えばあなたが、上司の何気ない独り言や、家族からの冷たい態度について、「嫌われてしまった」、「期待を裏切ってしまった」と思うことがあったとします。しかし、独り言や態度のみでは、誰に向けて言ったのか分かりませんし、何について言ったのかも分かりません。もしその時に「私のことが嫌いになったから、ああいう態度をとったのだろう」「直接言わず、態度で表そうとするタイプだ」と思い込み、話さないようにしたとします。話さないことで、その場凌ぎはできますが、上司や家族の気持ちは分からず根本解決には至りません。上司や家族に確認することで、はじめて独り言や態度の意味が分かるのです。

また、仕事に集中していないように見える部下について、「仕事にやる気がない人」というタイプ分分けをしていたら、実際は、「仕事はやる気があるが、優先順位をつけることが苦手」で困っていたということもあります。万が一、本当に仕事にやる気がない人であっても、会社側が「配慮・協力できることはあるか」を確認しておくことで、大きな収穫を得ることもあるかもしれません。

人は「言葉」を用いたコミュニケーションの中で、誤解を解き、お互いの妥協案を探していけるのです。

思い込みを捨てる

 

コミュニケーションの中で起こる“あるある”の中に、「相手に伝わっているはず」という思い込みがあります。例えば、「明らかに嫌な顔をしたのだから、私が○○をしたくないことは、相手にも伝わっているはず」とか、「メールの返信をしていないから、私が乗り気じゃないことは伝わっているはずだ」などが挙げられます。

他者の気持ちは、言葉で伝えてもらわないと分からないのと同じように、あなたの気持ちも言葉にしなければ誤解されているかもしれません。自身の気持ちを言葉にすることで、他者に分かってもらえる機会が増え、ズレの少ない円滑なコミュニケーションを体験できるでしょう。例えネガティブな内容であっても、相手の気持ちを考えながら、自身の素直な気持ちを伝えてみることで、あなたが思っている反応とは異なる言葉が返ってくるかもしれません。

直接言いづらいときは別の手段を考える

 

1~3では、コミュニケーションの具体的な方法を記してきました。しかし、いざやってみようと思うと、案外難しいという方いらっしゃいませんか?特に、初めて重要な他者に気持ちを伝える時は、思うように話せないことや、思わず本心とは違う言葉を言ってしまうこともあります。

そのような場合には、手紙やメールで伝えることをお薦めします。気持ちを文章にすることで、自身の気持ちも整理することができますし、自身のペースで返事をすることもできます。中には、そのまま日記という形で“伝える練習”をする方も多くいます。また、メールや手紙で気持ちを伝えることができると、「話しをする」抵抗が弱まり、直接話すようになる方もいます。

無理のない方法で、まずは伝える一歩を踏み出してみましょう。

 

今回のコラムでは、コミュニケーションで大切な4つのポイントをお伝えしました。

人間には“言葉”という素敵なコミュニケーションツールがあります。私たちは、日々たくさんの言葉を話したり、聞いたりしながら生活をしています。同じ言葉を使っていても相手によって受け取り方が異なり、自身の言いたいこととは違う意味で伝わることがあります。しかし、そのズレを修正するのも、やはり“言葉”を用いることが大切です。

このコラムが、大切な人とのコミュニケーションを上質なものとする一助となり、多くの人の心が癒されることを願って。

次回は、重要な他者が思い浮かばなかった方へコラムを書きたいと思います。

参考文献
水島広子 2004 自分でできる対人関係療法 創元社