赤ちゃんがなぜ泣いているのかわからない!
おっぱいをあげても、おむつを替えても、抱っこしても泣き続けていて、もう限界!
どうにかして泣きやませることはできないの?
どんなに我が子がかわいくても、泣きやまない赤ちゃんにイライラが募ってしまう…というパパやママは多いのではないでしょうか。
今回は“なぜ赤ちゃんはよく泣くのか”、そしてイライラした時に赤ちゃんとどのように接するとよいのかお話ししたいと思います。
2:イライラした時のおすすめ(1)ベビーマッサージ(親子のスキンシップ)をしてみよう
3:イライラした時のおすすめ(2)わらべうたを歌ってみよう
1:赤ちゃんはなぜ泣くの?
赤ちゃんが泣くと、まずは「お腹がすいたのかな?」「おしっこをしたのかな?」と思うことが多いかと思います。しかし、赤ちゃんは「お腹すいたよ」「おしっこが出てお尻が気持ち悪いよ」というサインを出す時以外にも、自分が不快だなと感じた時には泣いて大人に訴えかけてきます。言葉をまだ話せない赤ちゃんは、自分の想いを伝える手段として泣いているのです。
例えば「暑いよ~」「寒いよ~」というように“環境を整えてほしい時”にも、「眠いよ~」「抱っこして~」というように“自分の要求を伝えたい時”にも、『おぎゃ~』という言葉で私たち大人に伝えようとしています。
でも、どんな想いも『おぎゃ~』という一言で表現してくるので、私たち大人は赤ちゃんが訴えている本当の意味をくみ取るのに四苦八苦してしまいます。
例えば真冬の寒い日、寒くて泣いているのかと思ってさらに洋服を重ね着させたら、実は暑くて泣いていた…ということもあります。
でも、四苦八苦しながら、ああでもない、こうでもないと赤ちゃんのお世話をしているうちに、赤ちゃんの要求と大人の行動が合致すると、赤ちゃんはスーと泣き止みます。そして赤ちゃんは「泣いたら、私が求めていることをやってくれた!」と気付き、安心することができるのです。そんなやりとりを何回も繰り返していくうちに、赤ちゃんは次第に「こんな風に泣くと(声を出すと)、○○をやってくれる」と学び始めます。そして「○○をやってほしいから、泣こう(声を出そう)」と思うようになります。実はこれがコミュニケーションの始まりです。
『おぎゃ~』という泣き声が、次第に“意味を持った音”(=喃語)になり、そして大人と意思疎通できる“言葉”となっていきます。
だから、赤ちゃんが泣くということはとても大切なことです。赤ちゃんにとってのおしゃべりなのです。
ママ自身がとても辛い気持ちの時、赤ちゃんが泣いていると、
「自分を責めているように感じる」
「私を困らせようとして泣いているのかしら」
と受け止めてしまうことがあります。
でも、ママを困らせようとして、意地悪で泣く赤ちゃんはこの世に一人もいないと思います。赤ちゃんはみんなママのことが大好きです。
今は赤ちゃんがなぜ泣いているのかわからなくても、どうか安心してください。毎日毎日赤ちゃんと向き合って、こうかな?そうかな?と悩みながらも赤ちゃんと関わり続けていくうちに、赤ちゃんの気持ちがきっとわかるようになります。
2:イライラした時のおすすめ(1)ベビーマッサージ(親子のスキンシップ)をしてみよう
赤ちゃんにとって“泣く”ということはおしゃべりと同じ。
そう頭ではわかっていても、赤ちゃんがなかなか泣きやんでくれない時にはイライラしてしまうこともあるでしょう。
「赤ちゃんとどうやって遊んでいいのかわからない」
「家の中で一日中赤ちゃんと二人きりで、どう過ごしていいかわからない」
と言う声もよく聞きます。
そんな時にはベビーマッサージを試してみてはいかがでしょうか?
ベビーマッサージを行うようになると、体重が増加したり、便秘が解消されたり、寝つきや夜泣きが改善される・・・など赤ちゃんの身体的な効果があると言われています。
さらに、ベビーマッサージは「タッチコミュニケーション®」とも言われており、スキンシップを通して気持ちを伝え合うコミュニケーションの一つと言えます。
まだ言葉のやりとりが叶わない赤ちゃんだからこそ、ベビーマッサージを行いながら、赤ちゃんと気持ちを伝え合いませんか?
ベビーマッサージには様々な手技がありますが、その本質は一つだけ。
それは“赤ちゃんを優しくなでる“ということです。
大人のマッサージのように、強く押したり揉んだりすることはしません。
手のひら全体で、赤ちゃんのぬくもりを感じ取るようにゆっくりと優しく、赤ちゃんのお腹や背中、腕や足をなでてみてください。
赤ちゃんは優しくなでられることが大好きです。ママやパパになでられると、赤ちゃんは安らぐことができ、幸せな気持ちになります。
それはなぜでしょう?
それは『オキシトシン』というホルモンがかかわっています。
オキシトシン とは
脳から分泌されるホルモンであり、母親が出産する時や射乳反射(母乳が乳首から出ること)を促す作用がある。
また、「愛情ホルモン」「幸せホルモン」とも言われており、オキシトシンが分泌されると、気持ちが穏やかになったり、相手を愛し、信頼する作用が起こる。
オキシトシンは、赤ちゃんがママのおっぱいを吸うとママの脳内から分泌されます。しかしオキシトシンはママだけでなく、赤ちゃんやパパからも分泌されます。それはどんな時でしょうか?
それは、パパとママが赤ちゃんに“触れた時”です!
ママやパパになでられると、赤ちゃんの脳内からも愛情ホルモンであるオキシトシンが分泌され、ママやパパに対する信頼感が深まり、幸せな気持ちに満たされます。その結果、夜泣きが減ったり、寝つきがよくなると言われています。
また、赤ちゃんに触れることによって、触れているパパやママからもオキシトシンが分泌され、イライラやストレスが緩和したり、赤ちゃんへの愛情が深まることも確認されています。
つまり、スキンシップをとると、赤ちゃんにとっても、パパやママにとってもオキシトシンの分泌が促され、親子の信頼関係が強くなるのです。
始めたばかりの頃や赤ちゃんの状況によっては、すぐに泣きやまないこともあるかもしれません。オキシトシンは、触れてすぐに効果が出るというものではないからです。しかし、繰り返し触れていくことによって、オキシトシンの効果が長期にわたって続くという特徴があります。臨床発達心理士である山口創氏が行った研究によると、小さい頃に両親にたくさん触れられた子どもは、将来にわたって情緒が安定し、攻撃性が減り、社会性が高まるとも言われています。
イライラして辛いなと思われた時には、自分自身のためにも、赤ちゃんのためにもベビーマッサージなどのスキンシップを増やしてみませんか?
3:イライラした時のおすすめ(2)わらべうたを歌ってみよう
ベビーマッサージとともにお勧めしたいのが「歌」を歌うことです。
赤ちゃんは歌声が大好きです。
特にママがわらべうたや子守歌を歌うと、穏やかな表情や笑顔が増えます。
わらべうたや子守唄の多くは「ドレミソラ」のように5音階でできていますが、中でも「ラ」の音が最も多く使われています。実は「ラ」の音の周波数は440Hz(ヘルツ)であり、人間にとって最も心地よい周波数だと言われています。
そのため、「ラ」の音を中心に作られているわらべうたや子守唄は、赤ちゃんにとって心地よいメロディーに聞こえ、笑顔が増えるのだと思います。
また、赤ちゃんはママのお腹の中にいる時から耳が聞こえており、生まれる前からママの声が聞こえているようです。そのため、生まれて3日目にはママと他の人の声を聞き分けることができているとも言われています。
生まれる前から聴き慣れていたママの歌声は、赤ちゃんに安心感をもたらし、笑顔を増やすのではないでしょうか。
また、ママが赤ちゃんをあやしたり、話しかける時の『マザリーズ』も「ラ」の音階に近いと言われています。
マザリーズ とは
母親が赤ちゃんに話しかける時に自然に出てくる独特な語りかけ方のこと。
その主な特徴は・・・
- 普段よりやや高めのピッチとなる
- 普段より速度がゆっくりとなる
- 普段より抑揚が大きくつく
日本語だけでなく、ほぼすべての外国語や手話による母親の語りかけにも上記のような共通の特徴があることがわかっている。
ファーナルドらの研究により、赤ちゃんは大人同士の話し方よりもマザリーズを好み、ゆっくりと高めの声でママに話しかけられると、安心感に包まれ、笑顔が増えることが明らかになっています。また、マザリーズによる語りかけは、赤ちゃんにとって真似しやすく、赤ちゃんの言葉の発達を促進させます。
しかし、近年マザリーズを自然に話せないママたちが増えていることが心配されています。ママがイライラしていたり、鬱状態の時には、マザリーズで赤ちゃんに語りかけることができにくくなると言われています。
そんな時こそ、同じ「ラ」の音で成り立っているわらべうたを声に出して歌ってみてほしいなと思っています。
わらべうたを歌うことで赤ちゃんが笑顔になるだけでなく、歌声がママ自身の気持ちにも作用され、イライラが緩和されていくのです。
【スキンシップをはかりながら楽しめるオススメわらべうた♫】
いっぽんばしこちょこちょ
いっぽんばーし こーちょこちょ
すべって たたいて つーねって
かいだん のぼって こーちょこちょ
ちょちちょちあわわ
ちょちちょち あわわ
かいぐり かいぐり
とっとのめ
おつむてんてん
ひじぽんぽん
※地域によって歌詞が異なる場合があります
赤ちゃんが泣いていてイライラしてしまう時・・・
赤ちゃんと二人で何をしていいかわからない時・・・
そんな時には、わらべうたを歌ったり、ベビーマッサージなどスキンシップを取り入れた遊びを行ってみてください。
引用・参考文献
『乳幼児の健康ハンドブック』全国健康保険協会愛媛支部
『子供の「脳」は肌にある』光文社新書 山口創
『母乳育児支援スタンダード』医学書院 NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会
『0歳児におけるマザリーズの効果に関する一考察』名古屋女子大学紀要61.261~270 2015
『子守歌の分析と楽曲データに基づく児童作曲プログラムの開発』陶山他2006