こんにちは。対人関係療法を専門にカウンセリングを行っております、島崎です。
看護師、医師、保育士、教師、相談員などの人をサポートする“対人援助職”という職業。
多くの人と出会い、色々な話を聞いたり、サポートしたりする職業には、利用者と真剣に向き合うからこそ起こる心の不調サインがあります。
今回のコラムでは、対人援助職の皆さんがこれからも元気に支援が続けられるように、対人援助職の人に起きる心の不調と対処法をお伝えします。
○こころの不調とは
こころの不調とは、疲れやストレスが溜まることで精神的・身体的に異変が起こることを言います。
仕事が中心になっている時は、その不調に気づけず、本人よりも周囲が異変に気付くこともよくあります。
対人援助職は、日々多くの人と関わり、その時にできるより良い対応をします。利用者から語られる内容や支援には、援助者の知識で対応できることから、支援者の想像を上回ることや、どのように対応すればよいか分からないこともあります。そのような仕事を続けていくためには、心の不調サインの知識を知っておくことが役立つと思います。予防や早期発見ができるようになるように、今回は、対人援助職の人に起こりやすい3つのSOSサインをお伝えします。
1.二次的トラウマストレス
2.コンパッション疲労
3.決断疲れ
1.二次的トラウマストレス
利用者の話や出来事を親身に聞き、対応することで、あたかも自分がその出来事を経験したように感じ、PTSDの症状が現れることを二次的トラウマストレスと言います。
二次的トラウマストレスでは、利用者の語りが何度も頭から離れなくなったり、その記憶を避けるような思考や行動になったりします。また、その内容を夢で見ることもありますし、過度な警戒心を抱くこともあります。無力さを感じ、うつ症状がみられることもあります。
二次的トラウマストレスを防ぐためには、同期に相談する、上司や教育係の先輩などと仕事の話をし、アドバイスを受ける等、人に話すことが大切です。援助者は1人で抱え込むよりも、守秘義務を守り、より良い支援ができるように相談する力を鍛えていくことが大切です。
2.コンパッション疲労
「コンパッション(おもいやり)疲労」とは、利用者の話を自分のことのように共感しながら聞くことで、援助者が強い疲れを感じることを言います。人は、他者の話を想像力を活かしながら聞いています。相手の出来事を脳の中で体験するようなイメージです。その共感を続けていくことで起こるのが、援助者側の共感疲労です。
コンパッション疲労が起こると、イライラしたり、自分を責めたりと、不安定なメンタル状況になります。
このコンパッション疲労の予防策として、マインドフルネスの瞑想が効果的と言われています。マインドフルネスとは「今この瞬間」に意識を向け、評価や判断をせず今の状態を受け入れることを目的として開発されました。代表的なマインドフルネスの瞑想法は5種類あり、自分の呼吸に集中する方法や、体の動きや感覚に集中する方法などがあります。
コンパッション疲労が続くと、自分のことを思いやる余裕がなくなることが特徴です。自分のための時間がとれているかを振り返り、生活スタイルを調整してみることが大切です。1日10分でも良いのでホッとできる時間を作りましょう。
3.決断疲れ
援助をする時は、様々な情報を整理し、できるだけ多くの選択肢を考え、柔軟に対応していくことが求められています。最善の選択を考え続けることで起こるSOSサインは決断疲れです。これは、職場で多くの選択を決めることにエネルギーが奪われ、仕事中にエネルギーが持たなくなったり、プライベートの決め事が負担に感じたりすることを言います。
決断疲れの主な例は、夕食を考えることが負担になる、休日の過ごし方を考えることができない、帰ってきてから家族と話すことに負担を感じるなどがあります。
このSOSサインの対処法は、自分の状態を把握できるようになること、そして自分のストレス発散方法を知ることです。また、自分の時間を作れるように生活を見直すことも大切でしょう。
今回お伝えしたSOSサインは、他者への支援に一生懸命取り組む人や、人を癒そうと努力している人にみられます。決して、心の弱さから起きているわけでないことをしっかりと理解しておくことが重要です。
対人援助職の人は、自分のことを二の次にして援助に力を入れる場合が多いです。自分のために休息することに抵抗がある人は、援助者がベストコンディションのほうが利用者のためになると思うことで、自分のケアに目をむけやすくなるかもしれません。
対人援助職は多くの人と関わり、目の前のことに責任を持って取り組まなければいけません。責任を持つということは、自分のエネルギーを全て使い果たすことではなく、長く安定した支援を続けることに意味があると思います。
あなたが、人を癒し、自分自身を癒し、できるだけ長く支援を続けられることを願っています。