大切な人の話を聴く3つのポイント

こんにちは。対人関係療法を専門にカウンセリングを行っています、島崎です。

今回は、臨床心理士として働く筆者が、人の話を“聴く”上で大切にしているポイントをお伝えします。

最近「聴く」に関する質問を受けます。

話をすることや聞くことは、社会で生きていくためには欠かせませんよね。

しかしながら、人の話を聴くスキルはなかなか教えてもらえません。

筆者も心理士として働くまでは“聴く”ことの奥深さを考えたことがありませんでした。

それでも最近「人の話を聴けるようになりたい」と要望を受けるのは、人間関係を築くためには“聴く”スキルが必要だと感じる人が増えてきているからだと思います。

今回のコラムでは、人とより良い関係を築くための“聴く”ポイントをお伝えしたいと思います。

目次

1.“今”に目を向ける
2.相手のペースを尊重する
3.ジャッチメントを捨てる

 

1.“今”に目を向ける

友達や家族、職場の人の話を聞く時に、過去のデータや未来の心配を同時並行で考えることはありませんか?これは、私たちが初めてのことよりも経験したことのほうが安心しやすい習性があるからです。過去の経験を活かして未来をより良くしようとすることは間違っていません。しかし、話を聞く時はこのスキルは1度隅に置きましょう。

なぜなら、話している相手は“今”のことを話しているからです。例え、過去の出来事を話していても、その過去の出来事についての “今”の感情や考えを話しているのです。

仲が良ければ良いほど、相手の過去の出来事を結びつけたくなるかもしれませんが、話し手は同じような経験の中で、自分のペースで学習しているものです。

「“今”はこう感じているんだな」と、あくまでも“今”の相手に目を向けましょう。

2.相手のペースを尊重する

人は、心の準備が整ってから話はじめます。

心の準備

①自分の気持ちを話せる状態になる

②この人であれば話してみようと思える

話す準備ができても、今はどうしても話せないことや言葉を濁す部分もあるでしょう。

話してくれない部分ではなく、文脈として状況を理解してあげることで、少しずつ話してくれる幅が広がるかもしれません。

聞き手が急がなくても、話し手のペースを尊重していれば、話し手のペースで前に進んでいきますので、話している途中で質問したり、話をまとめたりせず、話し手が何を言いたいか、何を分かってほしいのかに焦点を当てて話を聞いてみてください。

ちなみにですが、いつも人の悪口を言っているような人でも、相手が100%悪いと思っていることは少なく、自分の至らなさやうまくできなかった後悔を抱いている場合があります。人が自分の問題に目を向けるときはそれなりに安全が保たれている必要があります。じっくり話を聴いていると「でも、私も悪いところあったんだよね」と話始めることはよくあります。

相手が変わるタイミングは相手が決めるので、無理に反省を促さず、じっくり話を聴いてみてくださいね。

3.ジャッチメントを捨てる

最近、筆者が感じることは「身勝手な同情」と「共感」は違うということです。

「同情」は相手のことを自分のことのように親身になって共に感じることです。人と関わる中で多かれ少なかれ同情したことがあると思います。

ここでの「身勝手な同情」は話し手の出来事を聞き手の視点で感じるという意味で用いました。話し手が「辛い」と言っていないのに、「辛かった出来事」と聞き手が変換したり、話し手が感情に気づく前に聞き手が「○○な体験だったね」と決めつけられたりすることは、話し手にとって不快感を与えます。

「身勝手な同情」はジャッチメントによく似ていると思います。ジャッチメントは良い感情も含めて相手の感情を評価することです。例えば「友達にご飯に誘われた」という内容だけで「よかったね」と言ったり、「昇進した」という内容だけで「すごいね」と言ったりすることも含まれます。

「友達にご飯に誘われる=良いこと」「昇進=すごいこと」というのは、聞き手の感覚であり、その話をした背景にどのような気持ちがあるのかは話し手に聞いて見ないと分かりません。

「共感」はあくまでも、相手の気持ちに寄り添うことです。

話し手が「友達にご飯に誘われて、すごく緊張しているんだよね」と言われた時に、「緊張するよね」と言ったり、「昇進したけど、今までの役職が気に入っていて残念に思っている」と言われて「それは残念に思うね」と言ったり、あくまでも話し手の気持ちを主体として聴いていくことがポイントです。

最後に

私たちは、どんなに過酷な状況でも“自分の人生をより良くしたい”と思って生きています。自分自身に目が向くタイミングは人それぞれですが、相手が話す“今”の状態に一喜一憂するのではなく、この人のペースで前に進んでいくんだなと楽観的に考えましょう。聞き手が不安になったり焦ったりすると話し手は居心地の悪さを感じます。

相手の「生きる力」を信じて、じっくりと相手の話を聴いてみてください。

少しでも人の話を“聴く”お役に立てることを願って。